2011 Fiscal Year Research-status Report
ネコiPS細胞を用いた慢性腎不全への細胞移植療法に関する基礎的検討
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23658266
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
星 史雄 北里大学, 獣医学部, 准教授 (00219164)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ネコ / 腎細胞 / 再生 / iPS細胞 |
Research Abstract |
初年度の計画では、ネコのAQP2、AVPR、 Klf4、Oct3/4、およびSox2の完全長cDNAの配列決定と発現ベクターへの組み込みを予定していた。まず、ネコの各組織(精巣、卵巣、骨髄、腎臓)からAGPC法を用いてTotal-RNAを抽出し、Oligo-dTラテックスビーズ法を用いてmRNAを精製した後、他の動物種の塩基配列から設計した遺伝子特異的primerを用いてRT-PCRを行い、それぞれの部分的cDNAを増幅させ、TAクローニング後、Applied Biosystems 3130xl Genetic Analyzerを用いてその配列の分析をした。得られた配列に従い、それぞれネコAQP2、AVPR、 Klf4、Oct3/4、およびSox2に特異的primerを設計し、5’および3’-RACE-PCR法を用いて増幅し、それぞれの5’端および3’端のDNA配列分析し、ネコAQP2、AVPR、 Klf4、Oct3/4、およびSox2遺伝子の再構築を行った。猫のKlf4、Oct3/4、およびSox2は、中間配列、3’RACE配列、および5’RACE配列もすべて決定され、完全長配列を再構築できたが、ネコAQP2遺伝子およびAVPR-VR2遺伝子に関しては、まだ、完全長配列が得られていない。既に得られた遺伝子(Klf4、Oct3/4、およびSox2)は、CDS部分のクローニングを行い、それぞれ哺乳類細胞にトランスフェクト可能な高発現系ベクターである pCl-neo Mammalian Vectorにサブクローニングに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の達成度合いとしては、AQP2、AVPR、Klf4、Oct3/4、およびSox2の5つの遺伝子のうち、3つは、クローニングが完成し、最終目標である猫の皮膚線維芽細胞へ移入できるpCl-neo Mammalian Vectorへのサブクローニングも終了している。しかしながら、AQP2は中間部分の遺伝子配列は捉えたものの、AVPR-VR2に関しては、まったく遺伝子のクローニングに成功していない。AQP2およびAVPR-VR2は、腎臓の遠位尿細管細胞から集合管細胞の主細胞にのみ発現が認められており、遺伝子(mRNA)の存在が、比較的まれであることが考えられるため、集中的に腎臓の組織から遺伝子のクローニングを試みる。場合によっては、AQP2を誘導するために、ネコを脱水させてから、細胞を採取する等の処置が必要になるかもしれない。また、腎臓の組織を採取する際に、プロポフォール導入のイソフルレン麻酔下で、エコーを用いて、18GのTur-Cutバイオプシー針を用いて行っているが、必要に応じ、AQP2誘導後、安楽死もしくは片腎の部分摘出あるいは完全摘出を行って、組織を入手することが必要となるかもしれないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては、腎臓の組織(遠位尿細管細胞および集合管細胞)から、AQP2およびAVPR-VR2の完全長cDNAのクローニングを完成させることを第一の目標とする。また、サブクローニングしてある3つのiPS誘導遺伝子(Klf4、Oct3/4、およびSox2)を用いて、ネコの皮膚線維芽細胞へのCotransfectionを行い、iPS細胞の誘導を試みる。もし、Cotransfectionが失敗する様であれば、3つの遺伝子を繋ぎ併せた、巨大なプラスミドを作成し試みる必要があるかもしれない。作成されたiPS細胞は、本当に初期化されているかを、Nanogなどの他の初期化遺伝子の定量化RT-PCRにより明らかにすると共に、ヌードマウスへの接種実験を行うことにより、テラトーマの発現を確認し、完全なネコiPS細胞であることを証明する。また、ネコiPS細胞に関しては、ほとんど知見がないため、誘導後の維持培養、もしくは維持に必要な因子(例えば、EGFとか、LIFとか)も解明されていないため、その検討も必要となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画としては、基本的には当初計画と大きな変更はないが、多少、研究が遅れていることもあり、まず、始めに、AQP2およびAVPR-VR2の両遺伝子の完全長を決定するために資金を充当する。また、それと平行して、ネコの皮膚線維芽細胞を採取し、培養し、3遺伝子を導入・初期化するために資金を充当する。その後、iPS細胞を腎臓上皮細胞への誘導を行うことになる訳であるが、そこまでの資金が残っていなければ、次年度分の資金から多少充当することがあるかもしれない。
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