2011 Fiscal Year Research-status Report
感染症治療をめざした可逆的システインプロテアーゼ阻害剤の創製研究
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23659059
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
林 良雄 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (10322562)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 医薬品化学 / 創薬化学 / プロテアーゼ阻害剤 / 重症急性呼吸器症候群 / ビオチニル化試薬 / 感染症 / 固相合成化学 / システインプロテアーゼ |
Research Abstract |
重症急性呼吸器症候群 (SARS) の原因ウイルス(SARSコロナウイルス、SARS-CoV)が有するシステインプロテアーゼの阻害剤創製研究を通じ、システインプロテアーゼ阻害剤の共通科学基盤に基づいた創製手法の確立をめざす研究であるが、本年度は、強力なSARS-CoVプロテアーゼ阻害剤開発に注力して、現在得られている比較的マイルドな阻害活性を有する化合物2を基に構造変換を行い、より高活性な阻害剤創製を実施した。即ち、化合物2の阻害機構部である thiazole-2-ketone 構造の最適化を分子モデリングに基づき実施し、ベンゾチアゾールケトン構造がより優れていることを見いだし、この構造でP1'位を固定し、P2およびP4部位を誘導することで、高活性なトリペプチド型阻害剤を見いだすことが出来た。高活性な化合物は、米国ジョンズホプキンス大学フレール教授との共同研究により、熱力学的解析を行ない、誘導体の中にエンタルピー駆動型の化合物が有ることを見いだした。これらの化合物は、さらなる良好な誘導体創製において有用な出発点となると思われる(第132回薬学会で発表)。またさらに、Drugableな構造への変換として、より低分子のジペプチド型阻害剤創製に繋がる糸口を見いだすことが出来た(未発表)。阻害剤創製において固相化学合成法を用いる効率的な高親和性基質スクリーニング法の確立については、この手法で必要となるチオール基に対する固相担持型ビオチン化試薬の開発を行ない、対象となる基質と混ぜるだけで、精製無しにビオチニル化できる試薬の開発に成功し(出願済み)、論文(TL., 53, 535-538 (2012))として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今期における成果として、阻害剤スクリーニング系の構築におけるツールとしての固相担持型ビオチン化試薬の開発を達成した。スクリーニング系からの阻害剤の発掘は今後の課題であるが、基質配列に基づいて誘導してきた阻害剤からの構造活性相関およびそれに基づく強力なトリペプチド型阻害剤の創製においては、研究実績の概要で述べたように、大きな進捗を得た。近々に論文として報告できる状態になった。また、阻害剤の低分子化の糸口も得られた。電子吸引性のアリールケトン構造を基軸にすることで、これをシステインプロテアーゼ阻害剤に共通するオリジナルテンプレートとして位置づけ、種々のシステインプロテアーゼを統合的に創製するという目標を実現できる可能性が大きくなった。以上のことから、初年度の目標達成状況はおおむね順調に進捗してる。
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Strategy for Future Research Activity |
システインプロテアーゼは、種々のウイルス感染症と密接に関係しており、複数のウイルス阻害剤を「統合的」に創製できるシステムが構築できれば、感染機構解明への分子ツールの提供や医薬品候補化合物創製に繫がり、薬学において極めて大きな意義がある。現在注力している重症急性呼吸器症候群(SARS)の治療薬候補として有用なシステインプロテアーゼ阻害剤の開発研究では、トリペプチド型からより薬物として有効なジペプチド型小分子阻害剤の開発に今後移行していく。これらの研究を通じて、ペプチド性小型分子の創薬における重要性・意義を証明していきたい。また、期間中に口蹄疫ウイルス等の他のシステインプロテアーに対する阻害剤開発を、評価系の構築・スクリーニング系の確立を基に開始したい。尚、開発した固相担持型ビオチン化試薬については、スクリーニング系のみならず、蛋白質の修飾を含む他分野へ汎用的応用も検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度は、初年度に引き続き高活性な阻害剤開発を実施するが、そのための手法開発として、阻害剤の固相化学合成法を用いる効率的な高親和性基質スクリーニング法の確立 (コンビナトリアル合成によるスクリーニング用蛍光基質ライブラリーの合成) をめざす。この中で阻害剤 2 の P2-P4 部位に関しては、スクリーニングから得られた高活性基質構造の導入により最適構造を創製する。具体的には、P部位毎にアミノ酸を混合したミックスドライブラリーとすることで、高親和性基質として各サイトに最適なアミノ酸を選出する。異常アミノ酸も導入し、非天然型構造を有するペプチドミメティック型の高親和性基質の創製からの展開を図る。 また、得られた強力なSARS-CoVプロテアーゼ阻害剤については、コンピュータモデリングやX線解析を用いた高次構造解析、および薬理評価等の実施により、SARS治療薬の開発をめざし、大学発医薬品候補化合物創製を成し遂げたい。本課題研究で得られた結果に付いては取りまとめ、特許の出願の後、順次成果の発表を論文にておこなう。 一方、口蹄疫ウイルスプロテアーゼの獲得と評価系の創製についても検討を開始する。すなわち口蹄疫ウイルス3Cプロテアーゼの遺伝子組換え体の発現を検討し、酵素阻害評価系の確立をめざす。既に、当該プロテアーゼについては発現系が確立され、報告されていることから同様な手法で酵素を発現して阻害剤評価系を準備する。高親和性基質スクリーニングシステムの応用として、口蹄疫ウイルス3CProシステインプロテアーゼに対しても適用を検討し、一般性・汎用性を評価する。また、この他に疾患との関係があるシステインプロテアーゼについても、阻害剤開発の可能性を検討して行きたい。
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Research Products
(9 results)