2012 Fiscal Year Annual Research Report
慢性感染ウイルスとヒト免疫のバイオインフォマティクス解析
Project/Area Number |
23659232
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
上野 貴将 熊本大学, エイズ学研究センター, 准教授 (10322314)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / 進化 |
Research Abstract |
ヒト感染免疫学では、感染個体で見られた現象が、ウイルスに起因するか、免疫系に起因するか、ウイルスやヒトの多様性の問題か、明確にすることが困難なケースが多い。本研究では、HIV-1 Nefの機能と、感染者の病態について、さまざまな観点から解析を行った。まず、アメリカおよびカナダのグループとの共同研究で、慢性感染者のうち抗レトロウイルス療法を受けていない人を約200名リクルートした。血漿からウイルスRNAを抽出して、ウイルス遺伝子の解析を行った。ウイルスがサブタイプBであった検体について、さらにNef遺伝子をPCRで増幅してクローニングした。このうち、ランダムに選んだ約50名の検体について、Nef遺伝子をプロウイルスベクターに組み込み、感染性ウイルスを調製した。これらを用いて、ウイルス感染性、ウイルス複製能、CD4発現抑制、MHCクラスI発現抑制、CD74発現昂進の機能を測定した。同時に、感染者のウイルス量、CD4カウント、HLAクラスIアリルとの相関について解析を行った。その結果、Nef機能には、クローンによって(あるいは感染者によって)大きな開きがあることが分かった。ウイルス感染性、複製能、CD74発現昂進は特にその範囲が広かった。それに対して、CD4発現抑制、HLA-I発現抑制機能は、クローン間で非常に狭い範囲のばらつきしか認めなかった。また、感染者の臨床マーカーとの多変数解析を行ったところ、ウイルス感染性とCD4カウントに相関が認められた。感染者のHLA-Iアリルとの関連性を解析したが、統計学的に有意な関連性は認められなかった。おそらく、HLA-Iアリルの多型性が大きいため、この程度の検体数では、十分に精度の高い結果が得られないためと考えられた。
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