2012 Fiscal Year Research-status Report
180kDa類天疱瘡抗原の切断と自己抗原性獲得機構
Project/Area Number |
23659547
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平子 善章 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50377909)
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Keywords | 自己免疫疾患 / コラーゲン / プロテアーゼ |
Research Abstract |
BP180(180-kDa BP Antigen)は、水疱性類天疱瘡(BP: bullous pemphigoid)を含む自己免疫性皮膚疾患の抗原タンパク質である。私たちは、BP180の自己抗原性の獲得機構の解明を目指して研究を進めている。特に、BP180のNC16Aドメインの自己抗原性とプロテアーゼによる切断によって生じる切断依存的エピトープの関係に注目している。 23年度に実施したモノクローナル抗体1337を用いた実験結果から、切断依存的エピトープはウシBP180のNC16Aドメイン中の546番目ロイシンから572番目アルギニンの範囲に存在することを明らかにした。 24年度は、1337抗体に類似した抗原認識特性をもつ線状IgA水疱症(LAD)患者自己抗体のエピトープ特性の解析を試み、以下の結果を得た。 1)私たちが開発したHD-rich fractionを使って、LAD患者自己抗体との反応性を調べた。その結果、これまで、ほとんど反応しないと思われていた全長BP180分子ともLAD自己抗体は反応する事がわかった。このことから、LAD自己抗体が認識する切断依存的エピトープは、切断されることによって新たに形成されるポリペプチド鎖のN末端を認識するのではなく、切断によって形成が促進されるようなエピトープを認識している事がわかった。 2)次にこのLAD自己抗体のエピトープを決定するために、ヒトBP180の配列に基づいた大腸菌リコンビナントタンパク質を作製した。エンテロキナーゼによる切断後、LAD自己抗体との反応を調べた。予想に反して、自己抗体は大腸菌リコンビナントとは反応しなかった。このことから、1337抗体とは異なり、LAD自己抗体は哺乳類細胞特有の翻訳後修飾が関わっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
24年度には、LAD自己抗体が認識する切断依存的エピトープの性質の解析を試みた。ところが、LAD自己抗体は、1337抗体とは異なり大腸菌リコンビナントタンパク質とは反応しないことがわかった。これは予想外の事であった。そこで、哺乳類細胞に一過的にBP180タンパク質を発現させ、LAD抗体との反応性を調べる事を試みたが、一過性発現では、実験に十分なだけのタンパク質量を得る事ができなかった。以上の理由から、当初計画よりも研究の進展はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の結果から、患者自己抗体は大腸菌リコンビナントタンパク質とは反応しないことがわかった。私は、患者自己抗体が大腸菌由来のリコンビナントタンパク質と反応しなかったのは、自己抗体のエピトープ認識には哺乳類細胞特有の翻訳後修飾が関わっているのではないかと考えた。そこで、25年度は、新たに哺乳類細胞由来のリコンビナントタンパク質を作製し、実験を継続する。一過性発現では、十分な量のBP180タンパク質が得られなかったので、BP180の一部分を発現する安定株をまず作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、哺乳類細胞由来のリコンビナントタンパク質の作製と精製、それらを用いた自己抗体のエピトープ解析、その結果の学会誌への投稿費用に用いる。
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Research Products
(3 results)