2011 Fiscal Year Research-status Report
次世代型メラノーマ経鼻噴霧ワクチンベクターによる遺伝子免疫療法
Project/Area Number |
23659549
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
河野 光雄 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00234097)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 恵一 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70314135)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | PIV2 / メラノーマ / 遺伝子免疫療法 / 腫瘍免疫 / 免疫活性化 / 細胞性免疫 / 液性免疫 / 生体制御 |
Research Abstract |
本研究においては、メラノーマ特異抗原であるTRP2およびTh1誘導のアジュバントであるAg85Bの両遺伝子を搭載した非増殖型PIV2ベクターを用いて細胞性免疫および液性免疫の両面からの相乗的アプローチを行い、乳癌に対する新規の経鼻噴霧型抗腫瘍ワクチンの確立をめざした。 2遺伝子搭載型ベクター作製の効率化を図るため、メラノーマ治療・予防用ベクター作製に先立ち、まず、2つの遺伝子導入サイトにEGFP遺伝子を挿入した2遺伝子搭載型のPIV2ΔMベクターを用いて、作製条件の検討ならびに各遺伝子導入部位における発現量の確認を行なった。その後、目的のベクター作製を行なったが、コンストラクト作製において、主要遺伝子導入サイト(NotI)へのTRP2遺伝子の挿入が逆向きばかりのプラスミドしか得られず困難をきわめた。クローニングに使用するコンピテントセルを数種変えて形質転換を行い、HB101を用い極めて小さな大腸菌のコロニーをピックアップすることで、研究期間終盤に、ようやくTRP2を搭載したプラスミドを得ることができた。このプラスミドから上記により決定した最適条件下で、リバースジェネティクス法を用い抗腫瘍ワクチンベクターを完成させた。また、Ag85Bを挿入したPIV2ΔMベクターについても回収できた。 メラノーマモデルマウスは、C57BL/6マウスにB16細胞(1x10^5cell/匹)を皮下に移植し作製した。腫瘍は経時的に増殖した。さらに早期に確実な肺転移を起こすため、同様の細胞をマウスに静注し、肺転移モデルを完成させた。肺への転移は、腫瘍細胞静注後3週間でCTにより確認できた。 PIV2ベクター経鼻投与によるメラノーマの治療・転移予防効果の検討においては、上記のベクター作製において示したように、TRP2遺伝子を搭載したPIV2ΔMベクターの作製が遅れたため当初の計画は実行できなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
乳癌治療・予防用ベクターのコンストラクト作製において、発注した人口合成遺伝子(TRP2)の納期がおくれ、さらに主要遺伝子導入サイト(Not I)へのTRP2遺伝子の挿入が逆向きばかりのプラスミドしか得られず、その解決に時間を要したために、目的とする抗腫瘍ワクチンの完成が当初の計画よりかなり遅れてしまった。そのため研究期間内に予定していた抗腫瘍ワクチンの有効性評価がまったく実施できなかった。 しかしながら、この研究過程において、予想しなかった新たな知見(他のパラミクソウイルスでの報告と異なる導入遺伝子位置での発現量の違い)を得ることができた。この知見により、実用性の点から平成24年度においては、予定していた2遺伝子搭載型ワクチンではなく、平成23年度に作製できた抗腫瘍活性をもつそれぞれの遺伝子を搭載した2種類のベクターの同時投与による2種混合経鼻噴霧型抗腫瘍ワクチンの有効性評価のみに絞って研究を進めていくことで研究の遅れを取り戻すことが可能になると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の過程で、2遺伝子搭載型PIV2ΔMベクターの導入遺伝子部位であるSal I及びNot Iの両サイトに、またはいずれか一方のサイトにEGFP遺伝子を挿入したベクターを用いて行った導入位置における発現量比較により、本ベクターにおける2遺伝子同時発現が確認され、さらにSal Iサイトに導入したEGFPの発現量は、予想よりも極めて少ない発現量(<<1/10)であることが確認された。これらの結果からSal Iサイトの位置に導入した遺伝子発現は、実用的ではないことが示唆された。 本研究計画では、当初、メラノーマに対する腫瘍特異抗原であるTRP2およびTh1を誘導するアジュバントであるAg85B遺伝子の同時搭載型PIV2ベクターの構築を想定していたが、本研究過程で得られた遺伝子発現量の点からの実用性を考慮し、2遺伝子搭載型ワクチンではなく、2種混合経鼻噴霧型抗腫瘍ワクチンへ転換が必要であると考えられる。 そこで、今後の展開として、TRP2遺伝子を搭載したPIV2ΔMベクターもしくはAg85B遺伝子を搭載したPIV2ΔMベクターの2種同時投与による相乗的効果を検討し、2種混合経鼻噴霧型抗腫瘍ワクチンとしての有効性ならびに(1) ELISPOTアッセイを用いたTRP2に対する特異的CD8+T細胞レスポンス、(2)ELISA等を用いたTRP2特異的抗体価測定によるB細胞レスポンス、(3)病態部位および各組織に浸潤する細胞等の病理学的解析ならびにFACS等による解析、(4)マウスへの腫瘍免疫を担う細胞に対する抗体の腹腔内投与による抗腫瘍効果のメカニズム解析を行っていく予定である。また、PIV2ベクターの投与量ならびに投与回数を変えて抗腫瘍効果を検討し、さらに、皮下および経鼻からの複合投与による抗腫瘍効果を検討する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
乳癌治療・予防用ベクターのコンストラクト作製において、発注した人口合成遺伝子(TRP2)の納期がおくれ、さらに主要遺伝子導入サイト(Not I)へのTRP2遺伝子の挿入が逆向きばかりのプラスミドしか得られずその構築が困難をきわめた。研究期間終盤にようやく目的の抗腫瘍ワクチンベクターを作製できたが、この遅れにより今年度内に研究計画で予定していた抗腫瘍ベクター経鼻投与によるメラノーマの治療・転移予防効果の検討が実施できなかった。これらの理由により、予定数のマウスならびに有効性解析に使用するELISPOTアッセイキット、ELISAキット、FACS等に使用する各種抗体を購入しなかったため次年度への繰越研究費が生じた。 平成24年度は、上記に示した平成23年度に購入しなかったアッセイキットや各種抗体を購入し、研究の遅れた抗腫瘍ワクチン有効性評価の進展を図るとともに、平成24年度の実際の研究計画に示したマウスへの腫瘍免疫を担う細胞に対する抗体の腹腔内投与による抗腫瘍効果のメカニズム解析のための各種抗体(CD8+T抗体、CD4+T抗体、NK抗体)、および実験動物の購入に使用する予定である。また、平成24年度は研究期間の最終年度であり、成果の学会発表ならびに論文投稿のための費用としての使用を予定している。
|
Research Products
(4 results)