2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23659687
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西堀 正洋 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50135943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
劉 克約 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40432637)
和氣 秀徳 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60570520)
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Keywords | 脳外傷 / 血液-脳関門 / HMGB1 / 脳浮腫 / 抗体医薬 |
Research Abstract |
申請者は、中大脳動脈の2時間閉塞・再灌流によって生じるラット脳梗塞に対し、代表的組織損傷由来警告信号分子であるHigh Mobility Group Box-1 (HMGB1) を標的とする抗体医薬が極めて優れた効果を示すことをすでに明らかにしてきた。抗体の作用機序解析と内因性HMGB1の作用解析の結果、虚血障害によって神経細胞の核から放出されるHMGB1が、脳組織に特有の血液―脳関門(BBB)血管構造に働き、BBB の機能ならびに構造破綻につながることを実験的に証明してきた。上記の知見から、脳虚血と同様のBBB破綻を来たす可能性のある疾患病態として脳外傷時の脳浮腫を考え、本研究に取り組んだ。まず、Wister 系雄性ラットを用いて、パーカッションインジュリー装置で麻酔下に脳打撃傷害を作製した。受傷圧を2.2-2.6 Atm とすることで、中等度の神経障害モデルを作製した。受傷部位のHMGB1動態を観察した結果、受傷直後から神経細胞内特異的にトランスロケーションが生じていた。受傷直後とさらに6時間後に抗HMGB1抗体を尾静脈から投与した。受傷6時間後に脳血管透過性をエバンスブルー色素の脳内漏出で評価したところ著明な抑制が観察された。抗体の効果は0.33 mg/kg、0.66 mg/kg、1 mg/kg と用量依存的であり、治療有効時間帯は受傷後3時間と推定された。ヘマトキシリン・エオジン染色で打撃局所を観察すると、対照動物では24時間後に細胞死に陥った神経が多数観察されたのに対し、抗HMGB1抗体治療群では、神経細胞死が著明に抑制されていた。以上の知見から、脳外傷後の脳浮腫はこれまで考えられてきた以上に生物学的生体反応の性質を持っており、その反応を担う因子としてHMGB1が極めて重要であることが明らかになると共に、抗HMGB1抗体治療が有望な治療法となりうることが示された。
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Research Products
(22 results)