2011 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性アシネトバクター対策としての抗バイオフィルム剤探索とその基盤技術の開発
Project/Area Number |
23659759
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
公文 裕巳 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30144760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
狩山 玲子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40112148)
村上 圭史 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (10335804)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細菌 / 感染症 / アシネトバクター / バイオフィルム / 抗バイオフィルム剤 |
Research Abstract |
多剤耐性アシネトバクターによる院内感染対策が喫緊の課題となっている。本研究では、Acinetobacter baumannii を対象として新規の抗バイオフィルム剤を探索することにより、本感染症に対する予防法・治療法の確立を目指す。1) A. baumannii のアウトブレイクが確認されたA施設ならびに未確認のB施設から分離されたA. baumannii 株のバイオフィルム形成能について比較検討した。バイオフィルムアッセイは静置法と振盪法で行い、形成されたバイオフィルムをクリスタルバイオレットで染色して定量化(OD 570値)した。培地はトリプトソイブイヨン(TSB)と人工尿を用いた。A. baumannii のバイオフィルム形成能は、方法の比較では振盪法が静置法より有意に高く、培地の比較ではTSBが人工尿より有意に高かった。多剤耐性株が特に高いバイオフィルム形成能を有するという成績ではなかった。2) 新規マイクロデバイス(bio観る)を用いるフローセルシステムでの検討を行った。A. baumannii が48時間後に形成したバイオフィルムを蛍光染色キットにより生菌と死菌に染め分け、共焦点レーザー走査型顕微鏡で観察した。その結果、多剤耐性を示すA. baumannii 8株は多様なバイオフィルムを形成していた。人工尿の潅流で密度の高い均質なバイオフィルムを形成する株が2株あり、厚さは53と44μmであった。 3) 上記 2)の成績に基づいて選択したA. baumannii 2株を用い、マウス大腿部感染モデル(in vivo 実験モデル)の作製が可能であることを確認した。4)上記 3)のA. baumannii 2株を用い、発光株および蛍光株の構築に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基金化科学研究費の初年度ということで、採択内定通知を受けたのが例年より1ヶ月遅れであり、それに伴い研究分担者への配分が遅れたこと、また東日本大震災の影響で交付額が減額される可能性があるとの通知があり、慎重な執行に留意したため、本格的に研究費の使用を開始したのが10月以降となった。従って、発光株および蛍光株の構築に向けての実験の開始が遅くなった。
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Strategy for Future Research Activity |
リアルタイムイメージングを実現する in vitro および in vivo バイオフィルム実験モデル系(Acinetobacter baumannii)を確立し、クオラムセンシング機構の阻害剤(QSIs)として見出された化合物および新しいコンセプトにより合成された化合物(抗菌活性をもつクオラムセンシング機構の阻害剤)の効果とその効果増強法について探索する。 平成23年度に得られた成果に基づいて、(1) リアルタイムイメージングシステムとしての in vitro & in vivo 実験系(A. baumannii)を確立する(公文・狩山・村上・堀・光畑)、(2) in vitro & in vivo バイオフィルム実験系(A. baumannii)を用い、抗菌薬などバイオフィルム阻害候補化合物のスクリーニングを行う(公文・狩山・堀・光畑)、(3) 上記 (1)~(2)の成績に基づいて、QSIsと抗菌薬との併用効果について評価を行う (公文・狩山・堀・光畑)、(4) 上記(1)~(3)の成績に基づいて、バイオフィルム阻害候補化合物/カチオニックリポソーム複合体を調製して、ドラッグデリバリーシステム(DDS)による標的医療の可能性を検証する(公文・狩山・堀・光畑) 以上の実験研究を推進することで得られた研究成果を取りまとめ、学会や研究会において発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は平成23年度と同様に、細菌培養培地類、プラスチック・ガラス器具類、一般試薬類、組換えDNA実験に必要な酵素・キット類などの消耗品を購入する。また、研究費は学内共同実験室と動物資源部門利用料金、機器使用料金にあてる。繰越額は発光株および蛍光株の構築が遅れたために生じた。従って、繰越額(832,851円)は、上記(1)の実験を遂行するために必要な酵素・キット類の購入、学内共同実験室と動物資源部門利用料金、機器使用料金にあてる。次年度に請求する研究費は、主に上記(2)~(4)の実験、一部を上記(1)の実験を遂行するためにあてる。50万円を超えるような備品類の購入の予定はない。 また、研究費は研究成果発表のための学会や研究会への出張旅費、学術雑誌への投稿費用や印刷費などでも使用する予定である。
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Research Products
(1 results)