2011 Fiscal Year Research-status Report
集中治療患者の重症度診断リアルタイム・バイオマーカーの創出と診断機器開発研究
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23659846
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木戸 博 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 教授 (50144978)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 集中治療室 / ATP / 乳酸 / 重症度 / リアルタイム・バイオマーカー / 予后判定 / エネルギー代謝 / 代謝障害 |
Research Abstract |
集中治療室で、患者の病態をリアルタイムに判定する方法として、生体のバイアビリティの根源的指標であるATPに注目した研究を実施する。具体的には、1、リアルタイム・バイオマーカーの創出:検体の収集し易い末梢血を材料に、ATPレベルと代謝障害時に蓄積される各種生体物質と組み合わせ、疾患の病態と理論的に関係付けれるリアルタイム・バイオマーカーを創出する。2、迅速診断型ATP測定キットと機器の開発:ATP量を正確に測定する改良型ATP測定キットを作成して、ベットサイドでATP測定できるキットと装置を開発する。3、適応疾患の選択と重症度スコアの確定:疾患の病態を理論的に説明するリアルタイム・バイオマーカーでなければならないことから、適応疾患を選択して重症度との関係を明らかにする。また年齢別正常値を決定する。以上の達成するため、平成23年度は以下の研究成果を得た。 従来ATP測定キットに使用されていた組織や細胞からのATP抽出試薬は、強酸のTCAやPCAであったが、この場合変性した蛋白質と共にATPが共沈してしまい、ATPの抽出効率は低く10%にも満たないことが判明した。本年度の研究では、測定に必要なATPの抽出試薬の改良が行われた。その結果フェノールを含む抽出薬でほぼ完全にATPが抽出されることを見出して、Anal Chim Acta 2012, doi:10.1016/j.aca.2012.03.022に発表した。さらにこの新規抽出薬を用いて健常者155名と集中治療室患者42名の血液中のATP, 乳酸値の測定が実施された。その結果、従来集中治療室で患者の重症度測定に用いられていたAPACH IIにくらべて、real-timeに患者の重症度の推移を測定できることが判明して論文の投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的としていたリアルタイム・バイオマーカーの創出において、末梢血ATPレベルの重要性を検討したが、この研究も最も基本となるATP測定のATP抽出方法において、従来世界で使用されていた方法に重大な欠陥のあることを見出した。この重大な欠陥の解決方法としてフェノールを含む抽出薬を見出し、これによってほぼ完全なATPの抽出、測定方法を完成させ、Anal Chim Acta 2012, doi:10.1016/j.aca.2012.03.022に発表しており、この方面の研究における功績は高い。さらに病院倫理委員会の承認の基に、健常者155名と集中治療室患者42名の血液中のATPを測定して、リアルタイム・バイオマーカーとしての位置づけを行い、従来集中治療室で患者の重症度測定に用いられていたAPACH IIにくらべて優れていることを証明しており、研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究で、研究に必要なATPの抽出、測定方法を完成させていることから、平成24年度は、これを基盤にさらに解析を進める。具体的には次の2点に絞った研究の展開を図る。1、患者の重症度を示すパラメーターとしてATPを提案しているが、代謝障害によって生じるエネルギー代謝の中間体の幾つかを抽出して、ATPと代謝中間体の比率から患者の重症度がどの程度正確に示せるかを検討する。2、迅速診断型ATP測定キットと測定装置の開発。現行のATP測定システムでは、検査室での測定用にできており、ベットサイドでリアルタイムに測定することは困難である。そこで、ATP測定キットを改良して、遠心機のないベッドサイドでもできるように簡略化する方法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越経費については、全て3月末に発注した消耗品の支払いに当てるが、すでに納品済で4月中に支払いは完了する。平成24年度は、研究開始時に計画したように、試薬類などの消耗品費が全体を占める。特に患者検体の増加を計画しており、各種代謝産物の計測に平成24年度の経費は使用される予定である。また計画の変更は無い。
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Research Products
(1 results)