2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔バイオフィルムにおける新規スーパー耐性菌の探索とその薬剤耐性機構解明
Project/Area Number |
23659878
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
苔口 進 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10144776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 博史 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00274001)
玉木 直文 岡山大学, 大学病院, 講師 (20335615)
狩山 玲子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40112148)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細菌 / 感染症 / 歯学 / 薬剤耐性 / バイオフィルム |
Research Abstract |
昨今、多剤耐性緑膿菌をはじめ、ほとんどの抗菌薬が効かない高度薬剤耐性菌(スーパー耐性菌)の蔓延が問題となっている。さらに抗菌薬をも積極的に利用しうるスーパー耐性菌の出現も予想され、注目されている(Dantas G.ら Science,2008; 320 (5872): 100-3)。 そこで、今年度は、まずは歯科医療環境(デンタルユニット水)や健常人歯垢から抗菌薬を唯一の炭素源として利用して増殖しうるスーパー耐性菌についてDantas G.らの報告を参考に、無機塩溶液に炭素源として各種抗菌薬(kanamycin、mafenide、 penicillin G、vancomycin )をそれぞれ1g/Lの濃度含む寒天平板培地を作成してスクリーニング調査を行った。 健常人歯垢(4名)からは培養コロニーは検出できなかった。一方、10台のデンタルユニットから採水したサンプル水の1つからは、penicillin G含有培地で極小コロニーが出現した。またすべてのサンプル水からkanamycin、mafenide、vancomycin含有培地で極小コロニーが出現し、その2つからはkanamycin含有培地で約1mmの淡黄色のコロニーが分離でき、グラム陰性桿菌であった。16Sリボソーム遺伝子塩基配列から解析すると土壌細菌のChitinophagaに相同性を示すものであった。これはDantas G.の報告にあるスーパー耐性菌、Sphingobacterialesに近縁であり興味深い。その薬剤耐性機構や代謝系などは不明であるが、aminoglycosideの取り込み系を有しているようだ。 さらにまた、心内膜炎の治療で大量のβラクタム系抗菌薬の投与を受けた患者口腔内からは、penicillin G高度耐性レンサ球菌(MIC 20μg/mL以上)が検出され、現在、その解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基金化の科学研究費の採択が初めてあったことや、東日本大震災の影響で次年度の研究費配分について先行きが不安で、当初、研究費使用が計画より滞ったため。 抗菌薬を唯一の炭素源として増殖するスーパー耐性菌を分離培養することはできたが、菌種の同定が1菌種にとどまり、またその菌種がこれまで経験したことのないグラム陰性菌種であったため、新規阻害候補物質の探索などが遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、引き続き、歯科医療環境や口腔内におけるスーパー耐性菌についての調査を進める。さらにスーパー耐性菌の薬剤耐性遺伝子の検出法の開発やその薬剤耐性機構を阻害する新規化合物の探索について研究を進める。1)健常人や長期抗菌療法を受けている入院患者の口腔内におけるスーパー耐性菌の保有状況や各種薬剤に対する耐性化状況調査を引き続き行う(苔口、前田、玉木)。2)スーパー耐性菌の迅速で簡便な検出方法としてPCR法やloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法を開発し、臨床検査への応用またその有用性を検討する(苔口、前田、玉木)。3)新規阻害候補物質の探索を行ない、抗菌化学療法が無効となる多くのバイオフィルム感染症に対する新治療薬の開発に繋げる(狩山、苔口担当)。 また、得られた結果を取りまとめ、国内外の学会で成果の発表を行いたい。 東日本大震災の影響による次年度の研究費配分を不安に思い、当初、研究費使用が計画より滞り、次年度繰り越し分(708,888円)が生じてしまった。繰り越し分も合わせて上記のように研究計画を立てて、研究を進めて行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は平成23年度と同様に、研究費は新規スーパー耐性菌の探索とその薬剤耐性機構の解明を行うため、一般試薬類、細菌培養培地類、検査キット、プラスチック・ガラス器具類、分子生物学のための実験試薬類などの消耗品の購入に主にあてる予定である。学内、医学部共同実験室のDNAシーケンス受託解析費用にも一部をあてる。50万円を超えるような備品類の購入の予定はない。 また、研究費は研究成果発表のための学会出張(日本細菌学会第80回総会、千葉幕張メッセ)、平成25年3月18日(月)~20日(水・祝))、学術雑誌への投稿費用や印刷費などでも使用する予定である。 次年度繰り越し分(708,888円)については、検体数を増やしてさらなる新規スーパー耐性菌の分離培養やそのDNAシーケンスによる菌種同定に、またその薬剤耐性機構を阻害する新規化合物の探索や候補化合物の化学合成にあてる予定である。
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Research Products
(4 results)