2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト歯髄幹細胞の培養上清をもちいた中枢神経再生療法の開発
Project/Area Number |
23659914
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 実 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00151803)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 朗仁 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50244083)
|
Keywords | 神経再生 / 脊髄損傷 / 培養上清 / 歯髄幹細胞 / ミクログリア / 抗炎症 |
Research Abstract |
ヒト歯髄幹細胞の神経再生能力は極めて高く、ラット完全脊髄切断モデルに移植すれば 下肢運動機能が回復する。これらの再生効果は、移植した幹細胞から分泌される神経再生因子群によるところが大きい。歯髄幹細胞由来中枢神経再生因子が同定され れば、細胞移植を伴わない安全で臨床応用しうる理想的な治療法を確立できることが期待される。本研究ではヒト歯髄幹細胞由来の無血清培 養上清を急性期脊髄損傷モデルへ投与し、その治療効果を確認した。さらに、その治癒メ カニズムをin vivo および in vitro で詳細に解析した。脊髄損傷における炎症・免疫反応の主役とな るミクログリアを用い、その初代培養系を LPS で刺激、炎症/組織破壊系ミクログリアへ 誘導し、その環境下で歯髄幹細胞培養上清を作用させ、炎症性サイトカインの遺伝子発現 変動や、細胞障害性因子であるグルタミン酸 や一酸化窒素産生の変動を解析した。歯髄幹細胞培養上清は LPS で活性化されたミクログリアの炎症性サイトカイン IL-6、IL-1β、TNF-α の発現を抑制した。これは骨髄間葉系幹細胞培養上清お よび繊維芽細胞培養上清でも同様の傾向を示した。また、ミクログリアからの細胞障害性因子グルタミン酸や一酸化窒素の産生を歯髄幹細胞培養上清が特異的に阻害した。さらに、非活性型ミクログリアに歯髄幹細胞培養上清を作用させると、CSPG(神経軸索伸長阻害因子であるが、近年脊髄損傷急性期に おけるミクログリア刺激因子の一つとして報告されている)を介し、抗炎症/組織修復系ミクログリアマーカーである CD206 を発現を誘導し、かつ強力な抗炎症性サイトカイン IL-10 を産生も促進した。これらの研究成果から、損傷した脊髄に抗炎症・組織再生環境を構築することが歯髄幹細胞培養上清の神経再生効果であることが明らかとなった。
|
Research Products
(4 results)