2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659915
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 朗仁 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50244083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日比 英晴 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90345885)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 骨延長 / 間葉系幹細胞 / 血管内皮前駆細胞 / 造血幹細胞 / 細胞集積 |
Research Abstract |
一般的にヒトの自己再生能力は極めて限られていると考えられている。しかしながら、整形外科、口腔外科領域では、骨折部位に一定の張力をかけ続けることによって「骨、神経、血管、筋組織などを含む大型組織新生・再生を促す-骨延長術」が臨床的に用いられている。ヒトも環境さえ整えば、十分な自己組織再生能力を発揮するのである。骨延長では、骨髄や骨膜に散在する間葉系幹細胞(MSC)・血管内皮前駆細胞(EPC)・造血幹細胞(HSC)の集積が重要な役割を果たすと考えられるが、 幹細胞集積の実体やその分子機構は多くが不明のままである。本研究は「骨延長を、生体内幹細胞の集積を応用した骨格系組織再生モデルと位置づけ、同現象における幹細胞集積因子の機能解析を行う」さらに得られた解析結果をもとにして「生体内幹細胞の集積システムを応用した、細胞移植も大型固定装置も用いない新しい再生医療システム」を考案する.主要解析項目は、1)幹細胞集積の実体:骨延長過程で Sca-1 陽性幹細胞の集積部位を同定する、2)集積する幹細胞の種類を明らかにする、3)骨延長でいかなる集積因子がいかなる細胞の集積に機能するか同定する、4)集積因子の機能抑制が組織再生に与える影響を解析する。これらの解析をとおして骨延長の実態を分子レベルで解明する。最終的には、細胞移植も大掛かりな固定装置も無しに、「生体内幹細胞の集積システムのみで骨延長と同等な効果が得られるような新しい治療法の開発」を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにマウス骨延長を解析して下記4点を明らかにし、Fujio, M., Yamamoto, A., Ando, Y., Shohara, R., Kinoshita, K., Kaneko, T., Hibi, H., et al. (2011). Stromal cell-derived factor-1 enhances distraction osteogenesis-mediated skeletal tissue regeneration through the recruitment of endothelial precursors. Bone, 49(4), 693-700. doi:10.1016/j.bone.2011.06.024に発表した。1)幹細胞集積の実体:骨延長過程で Sca-1 陽性幹細胞の集積部位を2カ所同定した:延長間隙(GAP)と髄質/仮骨境界 (MCI: medulla and callus interface)領域、2)集積する幹細胞の種類:二つ集積部位を構成する幹・前駆細胞の種類が異なることを見いだした、3)集積因子の特異性:ケモカイン SDF1 は EPC に特異的な集積因子として機能する、間葉系幹細胞の集積には別のファクターが重要な役割を果たすことを見いだした、4)SDF1の局所投与:血管系細胞の集積を促し、早期の仮骨形成(治癒)が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞集積因子の機能抑制や過剰発現による細胞動態・組織再生効率の変化を検証する。具体的には解析候補の機能抑制化合物質や中和抗体を購入し分子機能抑制実験。さらには集積因子蛋白を直接延長部に注入し治療効果を判定する。解析項目は以下の 点、1)Hematoxilin-Eosin染色、アリザリンレッドS染色、アルシアンブルー染色、前述の骨髄幹細胞・ 前駆細胞マーカーセットによる組織学的解析、2)骨髄移植と細胞移動の計測(マウスはC57/BL6を使用する):シンプルな免疫組織化学的に得られた結果を、in vivo imagingにて検証してみる。同系GFP-トランスジェニックマウスの骨髄単核球分画を、採取直後に遠赤外領域色素 XenoLight DiR (励起波長/蛍光波長:748/780nm)にて標識し、培養せずに骨端部より注入。Liveな細胞移動を IVIS200 in vivo imager(名古屋大学医学部共通機器)にてDiR陽性細胞の移動を計測。その後、組織切片を制作し、集積したGFP陽性細胞を幹細胞・前駆細胞マーカーセットで染色する。いずれの幹細胞が集積したかretrospective に解析する。(DiRは染色操作で流れ出してしまうため、GFPと併用する)3)細胞集積因子の過剰発現による骨延長促進実験:マウス大腿骨を骨切り後、独自に開発した創外固定装置を用いて固定して、5日間の待機期間を経た後、延長操作を開始する。通常、仮骨が形成されないハイスピードで延長を行う。4)従来の複雑な装置を用いない、骨折用の簡単な固定装置での骨延長:骨折の非観血的整復術に用いる簡単な固定による骨延長実験を行う。これ以前の研究成果を総合的に判断して、最適な固定装置を制作する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者が行おうとする、生体内幹細胞の局所集積システムの開発は、再生医療の実現を目指すものである。研究を遂行するにあたり、ケモカインやグロースファクターを用いたアッセイ、マウス骨延長実験を行なうことを予定している。よって、動物飼育費、細胞培養経費が必要となる。消耗品は動物からの細胞採取、細胞培養および評価のための試薬等に使用する。
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Research Products
(2 results)