2011 Fiscal Year Research-status Report
無重力環境下での骨芽細胞の遺伝子発現と分化機能発現に及ぼす歯周病原性因子の影響
Project/Area Number |
23659979
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
永田 俊彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10127847)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 裕司 徳島大学, 大学病院, 助教 (50380019)
板東 美香 徳島大学, 大学病院, 医員 (10510000)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 歯周病 / 無重力 / 骨芽細胞 |
Research Abstract |
本年度は、培養骨髄細胞を用いて骨芽細胞への分化およびその石灰化に対する模擬無重力環境の影響、さらに模擬無重力環境で歯周病原性因子添加による影響を検討した。ラット大腿骨より骨髄細胞を採取し、培養フラスコ(底面積12.5cm2)に播種した。次に骨芽細胞へ分化させるために培地中にβ-グリセロリン酸とアスコルビン酸を添加し、模擬無重力環境を与えることのできる3D-Clinorotatorを用いて3日間培養した。また、歯周病原性因子としてP. gingivalis由来リポ多糖(P-LPS)を培地に50-1000μg/mlの濃度で添加し、同様に模擬無重力を付与した。実験では、無重力対照群、無重力P-LPS添加群、重力下対照群、重力下P-LPS添加群の4群を設定して、培養終了後、細胞を回収し、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性の測定、RT-PCR法による骨マーカー(cbfa-1、オステカルシン;OCN、オステオポンチン;OPN)および炎症性マーカー(IL-6、IL-1α、IL-1β、TNF-α)のmRNA発現量の測定を行った。 その結果、通常の重力下対照群と比較して、無重力群ではALP活性および骨マーカーのOCNの発現が上昇した。これらはP-LPS濃度に依存して減少し、何れの濃度においても模擬無重力環境の方が酵素活性および遺伝子発現量は高かった。一方、炎症性マーカーではIL-6のみ無重力・P-LPS添加群で遺伝子発現が亢進し、その他の炎症性マーカーへの影響は認められなかった。この結果は予想する結果と逆であり、無重力環境下では骨芽細胞の分化が促進され、P-LPSによってそれらが抑制される結果となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養骨髄細胞に模擬無重力を加えると、当初の予想では骨芽細胞の分化が抑制されるであろうと考えられたが、実際実験してみると、全く逆の結果(分化の促進)が得られたことから、本年度は培養条件の検討を行うなど、予想以上の時間を費やした。そのためH23年度に行う予定だったマイクロアレイ分析は繰り越すこととした。H24年度は今回の結果(分化の促進)の妥当性についてさらに調べるために、別の骨芽細胞培養系を用いて引き続き検討を行う予定である。以上より、平成23年度は、予定していたマイクロアレイ解析実験を行うことができなかった点はあるものの、研究は概ね順調に遂行されているものと自己評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、株化骨芽細胞であるMC3T3-E1細胞を用いて本年度と同様の実験を行う。さらに、tail-suspension法により、実験的歯周炎ラット(臼歯部に絹糸結紮を行って実験的歯周炎を惹起させる)を用いて、模擬無重力環境における歯槽骨吸収量測定および免疫組織染色を行い、無重力によって影響される分子の変動を形態学的に確認する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度は備品(3Dクリノスタット)に多くの予算を費やしたが、H24年度は、実験遂行のための消耗品(細胞培養関連費用、分析用の各種キット、実験動物、組織染色消耗品など)に予算の大部分を使い、一部は学会発表や情報収集のための旅費に使う計画である。
|