2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23680044
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
風間 北斗 独立行政法人理化学研究所, 知覚神経回路機構研究チーム, チームリーダー (90546574)
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Keywords | 匂い記憶 / ショウジョウバエ / カルシウムイメージング / 古典的条件付け |
Research Abstract |
本研究は、ショウジョウバエ成虫の匂い記憶をモデルとし、シナプス・細胞・回路レベルで記憶のメカニズムを解明することを目指す。動物が記憶を形成したかどうかを判断するためには、その行動を観察する必要がある。そこで、ハエの飛行行動を詳細に解析するための装置を構築した。固定下のハエが、装置内で自由に羽ばたけるようにした。羽ばたきの様子は、マイクロフォンとCCDカメラで計測した。続いて、匂いを条件刺激、電気ショックまたは熱を与える赤外レーザーを無条件刺激とした古典的条件付けを行った。学習後、ハエは与えられた匂いに対して、遠ざかるように体の向きを変えたり、左右の羽ばたきの振幅を変えたりする、条件反応を示すようになったので、匂い記憶が形成されたと判断できる。 一方、ショウジョウバエ嗅覚神経系を構成する細胞群の匂い応答が、学習を通してどの様に変化するかを調べるための手法を開発した。神経活動の記録には、カルシウムイメージングを用いた。ハエは、顕微鏡下で記録用プラットフォームに固定した。頭部を覆う表皮をはがして脳を露出させるが、それ以外は操作を加えないので、ハエは記録中もその場で自由に飛行できる。遺伝学を用いて、嗅覚一次、二次、三次細胞それぞれにカルシウム指示薬を発現させた。その結果、匂いに対する応答を複数の細胞から同時に記録することに成功した。学習後に、神経細胞群の活動がどのように変化するかを観察・解析するための準備が整ったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショウジョウバエの行動解析装置と、神経活動を取得するイメージング手法を構築し、更には匂い記憶の形成に成功したため。これらを総合して、記憶の神経メカニズムを解析する準備が計画通りに整った。
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Strategy for Future Research Activity |
学習前後で、匂いに対する神経応答がどのように変化するかを観察する。更に、その変化のメカニズムを解析する。第一に、細胞の興奮性が変化したかどうかを検証する。細胞の興奮性は、パッチクランプ法で細胞内に流した脱分極電流と発火率の関係で評価する。興奮性の変化が細胞内に発現しているどのイオンチャネルに依存するのか、薬理学を用いて解明する。第二に、ORN-PN間、LN-PN間もしくはPN-KC間のシナプス結合強度が変化したかどうかを検証する。
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Research Products
(5 results)