2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23682011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
渡部 森哉 南山大学, 人文学部, 准教授 (00434605)
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Keywords | アンデス / 考古学 / ワリ / 国家 / 都市 |
Research Abstract |
2010年に実施したエル・パラシオ遺跡の第2次発掘調査で出土した全土器の分析を終了した。同遺跡から出土する土器のタイプを設定し、その編年を明らかにした。サンプルの写真撮影、図面作成、統計処理は未了である。また5時期にわたる建築の変遷を明らかにし、その3D図面を作成中である。 カハマルカ文化の特徴の1つはカオリンと呼ばれる白色粘土で製作された土器であり、時期的変遷を明確に示す。エル・パラシオ遺跡はカハマルカ中期B(後750-850年)、中期C(後850-950年)に主に利用され、カハマルカ後期(後950-1200年)のはじめに放棄された。同遺跡から得られた放射性炭素年代は後800-1000の値を示している。またCajamarca Black and Orangeという土器タイプがカハマルカ中期Cに、Cajamarca Red Paintedが中期Bに現れることを確認し、さらに中期Cに製作され始めたCajamarca Black and Redという新しいタイプを設定した。ワリ国家の支配下で新たな土器タイプが増加したことは明らかであり、各タイプが異なる人間集団の指標となるならば、エル・パラシオ遺跡には多くの集団が活動していたことになる。またワリ様式の多彩色土器の破片が少数ながら出土し、ペルー南海岸に多いアタルコ様式が多く含まれることが明らかになった。 建物の建て替え時や放棄時に墓が作られることを確認したが、そうした墓に外来の土器が副葬品として置かれることが多い。この埋葬パターンがエル・パラシオ全体で認められるどうかは不明である。 2008年、2010年に同遺跡から出土した動物骨の同定を専門家に依頼した。多くがラクダ科動物の骨であり、それ以外の動物の骨はあまりないことが明らかになった。他地域との比較により同遺跡の動物骨の特徴を把握することが課題である。金属器、石器、人骨の分析は未了である。 エル・パラシオはワリ国家の地方行政センターであり、今後他の行政センターと比較検討し、共通点を抽出し、同遺跡の特殊性を把握することが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2010年度に第二次発掘調査を行ったエル・パラシオ遺跡出土の全土器片の分析を終了した。全動物骨の分析も終了した。金属器については、現在保存処理を進めている。石器、人骨の分析は未了である。遺物の総量から判断すると、遺物の分析は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り2012年6月~9月にかけてエル・パラシオ遺跡の第3次発掘調査を実施する。遺跡の範囲を確定し、各地区ごとの性格の違いを把握することを主な目的とする。また第2次調査までの建築のデータを処理し、3D図面を作成する。 同時に土器の図面化を進める。保存処理が終わり次第、金属器の分析を専門家に依頼する。また第1~2次調査で出土した人骨、石器の分析を専門家に依頼する。
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Research Products
(7 results)