2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23682011
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
渡部 森哉 南山大学, 人文学部, 准教授 (00434605)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 考古学 / 都市 / 国家 / アンデス / ペルー / 人類学 / 文明 |
Research Abstract |
ペルー北部高地カハマルカ地方に位置する遺跡エル・パラシオの第三次発掘調査を実施した。同遺跡はワリ帝国(後7-10世紀)の行政センターと考えられ、100ヘクタール以上の広まりを有する。2008、2010年に発掘調査を行った区画を南側に延長し、また遺跡の全体構造を把握するために、他に発掘区を3つ設定した。その結果、全ての発掘区で建築の作り替えを確認し、同遺跡が長期間に亘って利用されたことが判明した。利用開始年代および最初期の建築形態を把握することが発掘調査の目的の一つであったが、地下水位が上がったため掘り下げを途中で断念した。 一般に地方行政センターの建築プランは、規格性が高く、作り替えはあまり認められず、小規模な作り替えを頻繁に繰り返すエル・パラシオ遺跡のパターンは珍しい。これは首都ワリ遺跡のあるアヤクーチョ地方で確認されているパターンであり、建築プランの違いが何に対応するのかは今後解明すべき課題である。 発掘調査では4トンをこえる遺物が出土した。墓、奉納のコンテクストに伴う遺物を接合、写真撮影を行い、その他の遺物は現在水洗いを進めている段階である。C区では製作途中の、あるいは完形の石器が大量に出土しており、同遺跡が突然放棄されたことを示唆している。また黒曜石の破片が多く見つかり、石器製作が行われたことを示している。エル・パラシオ遺跡はワリ帝国の地方支配のために設置された都市遺跡であり、恒常的に生活する人々は多くなく、ワリ帝国の衰退とともに放棄されたと考えられる。 平行してエル・パラシオ遺跡第二次発掘調査の出土遺物の分析、図面作成を進めた。出土土器の全ての分析、サンプルの選別を終了し、図面作成を進めた。研究代表者と共同ディレクターで土器の器形実測、写真撮影を行い、コンピューター上での紋様のトレース作業をアルバイトを雇って進めた。資料数が多いため、トレース作業は未了である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、エル・パラシオ遺跡の第三次発掘調査を実施した。計画通り6月に発掘を開始し、9月に終了した。また、第二次発掘調査の発掘区の拡張し、建築構造の詳細を把握した。 第二次発掘調査までの出土遺物の分析を実施した。土器の分析を優先的に進め、出土土器全体の組成を把握した。統計処理は未了である。また土器の図面作成、デジタル化は予定通り進行している。 土器以外の遺物の分析は他の研究者に依頼する予定である。獣骨の分析を専門家に依頼し、殆どがラクダ科動物の骨であることが確認できた。金属器の保存処理を現在進めており、終了次第、分析を専門家に依頼する。人骨の分析は今後専門家に依頼する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
エル・パラシオ遺跡第三次発掘調査出土遺物の分析を実施する。ペルーでは遺物の国外持ち出しが禁止されているため、研究代表者が8-9月、3月に現地に滞在し、出土遺物の洗い、註記、分析を進める。そのため作業員を約20名雇う予定である。 建築についての解釈を、出土土器の編年と照らし合わせて確認する。また、層位ごとの時期を土器に基づき決定し、それに基づき石器、金属器、獣骨、人骨など他の遺物の分析を進める。建築、土器、骨角器の分析は研究代表者が行い、それ以外の遺物の分析は専門家に依頼する。 土器をはじめとする遺物のサンプルの図面作成を行う。第二次発掘調査のサンプルの図面作成、デジタル化作業が終了次第、第三次発掘調査の遺物の図面化作業を始める。 建築プランの時期別図を作成し、今後共伴する土器の特徴と照らし合わせてチェックする。それが終了次第、建築の3Dモデルの作成をペルーの業者に委託する。
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Research Products
(6 results)