2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23682011
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
渡部 森哉 南山大学, 人文学部, 准教授 (00434605)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 考古学 / アンデス / ペルー / 都市 / 国家 / ワリ |
Research Abstract |
ペルー北高地、カハマルカ地方に位置するエル・パラシオ遺跡において、2012年に実施した第3次発掘調査出土遺物の分析を進めた。2013年8月9月、および2014年3月にペルーに滞在し、分析を行った。4つの発掘区の中のB1区の出土土器の分析を優先して進め、2008年度の第1次発掘調査、2010年度の第2次発掘調査の出土土器のタイポロジー、編年の整合性を確認した。装飾を伴うカオリン土器のみならず、非カオリン土器を含む全出土土器を分析対象とした。在地のカハマルカ文化の土器が出土土器の9割以上を占め、共伴して外来の土器が出土するという傾向が再確認された。建築については、壁の組み方、壁の基礎のレベルを基に編年案を作成していたが、それを各層の出土土器の特徴と照らし合わせ検討した。 土器分析と平行し、2010年の出土土器の図面のデジタル化を行った。さらに2012年度出土土器のサンプルの一部の図面化に着手した。同時に動物骨、人骨のクリーニングを行ったが、専門家による分析は未了である。 ペルー北海岸において同時代の遺跡がいくつか発掘されているため、それらの遺跡、出土遺物を実見し、エル・パラシオと周辺地域の年代的相互関係を確認した。 従来ペルー北高地がワリ帝国の直接支配下にあったかどうかが明らかではなかったが、エル・パラシオのデータは同遺跡がワリ帝国の行政センターであり、カハマルカ地方がワリ帝国の直接支配下にあったことを明瞭に示している。ヨーロッパなどの都市とは異なり、アンデスの行政センターは恒常的に人間が生活する場ではなかった。それは国家支配のための装置であり、労働と物資の管理を行い、支配を儀礼的に正統化する場所であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エル・パラシオ遺跡第3次発掘調査出土遺物の分析を進めた。2012年には予想を上回る約6トンもの遺物が出土したが、これまでの分析結果に照らし合わせ、効率よく土器分析を進めた。4つの発掘区のうちB1区の土器については土器のタイプ分類、タイプごとのカウントをほぼすべて終え、平行して土器の図面作成を進めた。C3区の土器については約半分の分析を終えた。B2区、C2区の土器は未分析である。また、石器、金属器、動物骨、人骨などのその他の遺物については、2008年度の第1次発掘調査、2010年度の第2次発掘調査の出土遺物の整理作業を始めた。土器の編年に基づき各層の時期を決定し、各時期ごとの特徴を把握することを目的とした。人骨については2014年度に他の専門家に分析を依頼する予定であるが、クリーニングを終えすぐに作業に取りかかることができる状態になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度も引き続き、8月9月、2015年3月にペルーに滞在し、エル・パラシオ遺跡第3次発掘調査出土遺物の分析を行う。B1区、C3区の土器分析を最優先で行い、その結果を基に、建築の編年を確定し、3D図面作成の基礎とする。また平行してペルー人のアルバイトを雇い、土器の図面のデジタル化作業を進める。全発掘区の土器分析、および土器の図面作成が終了するのは2016年度を予定している。 またエル・パラシオ遺跡の特徴を理解するため、ワリ帝国の他の遺跡を実見し、発掘担当者と情報交換を行う。研究成果については随時、日本語、スペイン語で発表する。
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Research Products
(2 results)