2011 Fiscal Year Annual Research Report
セファイド変光星の探査および分光観測による銀河系の構造と進化の研究
Project/Area Number |
23684005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松永 典之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特任研究員 (80580208)
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Keywords | 銀河系 / 恒星 / 変光星 / セファイド / 赤外線天文学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、セファイド変光星を利用して銀河系の構造と進化を探ることである。銀河系は、われわれの太陽系を含む渦巻き銀河であるが、その正確な形や星々の運動についてはいまだに詳細が分かっていない。セファイド変光星の距離や年齢は比較的正確に推定することができるので、銀河系の有用なトレーサになり得る。ところが、セファイド変光星が主に存在する銀河系円盤領域には強い減光を引き起こす星間ダストが存在し、そこにあるはずの変光星の多くは見つかっていない。そこで、星間減光の影響の小さい近赤外線での変光星探査を、南アフリカ天文台のIRSF望遠鏡と東京大学木曽観測所のシュミット望遠鏡で行う。さらに、見つかった変光星について分光観測を行い、それらの視線速度と化学組成を計測することで、銀河系の運動や化学進化の解明を目指す。平成23年度には、南ア天文台での観測を2週間行ったほか、東京大学シュミット望遠鏡に新たに搭載される木曽超広視野カメラKWFCの開発に取り組んだ。KWFCカメラは平成23年度中に基本的な開発が終了、平成24年4月から本格的な観測がスタートし、本研究課題の計画の一つである大規模銀河面探査(KISOGP計画)の観測もスタートしたところである。IRSF望遠鏡とシュミット望遠鏡のどちらの探査でも、順調に観測データが得られている。セファイド変光星の分光観測については、これまでの予備データを利用しながら、データ処理と比較する理論モデルについて国内外の共同研究者と検討を進めている。平成23年度中には5件の国際研究会に参加し、研究発表と情報の収集を行った。また、データの取得をすでに完了し、引き続き解析を行っていた銀河系中心領域のセファイド変光星探査についての論文を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時には開発中であった木曽観測所の超広視野カメラ(KWFC)は、予定通り開発が終わり、目標としている観測プログラムを開始することができた。このカメラでの観測と、南アフリカ天文台での観測ともに、セファイド変光星を探すためのデータが目標通り集まっている。もうひとつの目標であるセファイド変光星の分光観測についても、平成24年7月にすばる望遠鏡で行う観測課題が採択されており、その準備や予備データの解析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
東京大学木曽観測所および南アフリカ天文台で行っているセファイド変光星探査について、計画通り観測を進める。具体的には、木曽観測所で行う銀河面探査計画では年間100夜程度の観測を共同研究者と協力しながら行い、南アフリカ天文台には年間に1~2回滞在して観測を行う。一方、セファイド変光星の分光観測については、すばる望遠鏡での観測を平成24年7月に行う予定であり、他の望遠鏡での観測も今後計画を進める。変光星探査のデータ解析や解釈については、これまでに研究代表者が行ってきた研究などで確立されている。分光観測のデータ解析・解釈については、特に赤外線波長域での分光観測が少ないこともあり、今後検討を進める必要がある。そのため、国立天文台、京都産業大、イタリア・/ローマ大学の研究者らと準備を行っているところである。
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Research Products
(8 results)