2012 Fiscal Year Annual Research Report
セファイド変光星の探査および分光観測による銀河系の構造と進化の研究
Project/Area Number |
23684005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松永 典之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80580208)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 銀河系 / 恒星 / 変光星 / セファイド / 赤外線天文学 |
Research Abstract |
本研究では、セファイドなどの脈動変光星を利用して銀河系の構造と運動や化学的な進化(すなわち星やガスを構成する元素の時間的な変化)の調査を行う。星間減光の影響の小さい近赤外線での観測を行って、銀河系内の広い範囲に存在する脈動変光星を探し出すことが本研究の目標の第一である。南ア天文台のIRSF望遠鏡では、銀河系内側にある渦状腕領域について繰り返し観測を行い、これまでに各領域約50回分のデータが得られた。これは、主たるターゲットであるセファイドの同定を行うのに十分な観測回数であり、現在データ解析を進めている。一方、東京大学木曽観測所のシュミット望遠鏡の観測では銀河系外縁部にあたる320平方度の領域の反復観測を平成24年4月に開始し、各領域について10回分以上のデータが集まった。このデータを利用して、初期的な変光星のカタログ作成と、今後の突発天体検出を容易にするための基準となる画像の作成を行う。 本研究の第二の目標は、変光星の分光観測をすばる望遠鏡などで行い、それらの運動(視線速度)と化学組成を計測することである。平成24年度には、をすばる望遠鏡の共同利用観測として2回(のべ3観測夜)の観測行い、約10個のセファイドについて近赤外線(1.6ミクロンの周囲)での分光観測データを得た。現在、データ解析および理論モデルとの比較を進めている。また、セファイドの分光観測については、ヨーロッパ南天天文台のVLT望遠鏡での観測などを含む、ヨーロッパ(主にイタリア)の研究者らとの共同研究も進めている。 平成24年度中には2件の国際研究会(イタリアおよび中国で開催されたもの)に参加し、研究発表と情報の収集を行った。一方、データの取得をすでに完了し、引き続き解析を行っていた銀河系中心領域のセファイド変光星探査についての論文を刊行した(Matsunaga et al. 2013, MNRAS)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの変光星探査については、南アフリカ天文台IRSF望遠鏡と木曽観測所シュミット望遠鏡のいずれの観測でも、順調にデータが集まっている。IRSF望遠鏡での観測については、当初計画に必要であったデータをほぼ取得することができた。シュミット望遠鏡での観測でも、各観測領域について10回以上の画像が得られた(目標は3年間で35回程度)。これまでのデータを利用して、今後変光天体を探ることが可能であり、そのためのソフトウェア開発も進めている。一方、すばる望遠鏡での変光星分光観測も順調にデータが得られている。すばる望遠鏡は、共同利用観測の制度がとられているため、公募に申請する課題が採択されなければ観測が行えないが、平成24年度には2件の課題で観測を実施することができた。研究代表者にとっては、本研究課題が初めて取り組む分光観測となるため、データ解析などに多少の時間が必要であったが、これまでの研究で科学的な結果が得られつつある。分光観測データと理論モデルとの比較についても、国内外の研究者と検討が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、IRSF望遠鏡(南アフリカ)と木曽シュミット望遠鏡(長野県木曽郡)を用いた南北両半球での銀河系変光星探査と、ハワイ観測所すばる望遠鏡などでの分光追観測による変光星の運動・化学組成測定を行い、銀河系の構造と進化について調べる。 まず、IRSF望遠鏡での変光星探査については、昨年度までの観測が順調に進んだため、当初計画に必要であったデータをほぼ取得することができた。そこで、今年度は南ア天文台への渡航は行わず、研究協力者である永山貴宏氏(名古屋大学)ら他の渡航者に観測を依頼して、残りのデータを揃える予定である。今年度までに取得するデータをもとに解析を行い、カタログの作成、銀河系(特に渦巻き腕)の構造の議論を行う。 東京大学木曽観測所シュミット望遠鏡では、昨年度4月から超広視野モザイクCCDカメラ(KWFC)を用いて、銀河系円盤領域300平方度の変光星探査を実施しているところである。昨年に引き続き、ほぼ毎月繰り返し観測を行っていく。この観測プロジェクトでは、データ取得後に計算機が自動で解析を行うソフトウェアを開発しており、観測中に見つかった新天体については即時公開・報告することを目指している。平成25年度中に新天体を発見するシステムを構築するため、国内各機関の研究者が木曽観測所に集まって、ソフト開発およびデータ解析を行う合宿を何度か開催する予定である。 次に、ハワイ観測所すばる望遠鏡では、2013年7月に現地へ渡航して観測を行う予定である。そのデータと、2012年に取得したデータを合わせ、変光星の運動と化学組成を計測する研究を進める。特に化学組成を調べるためには理論モデルとの比較が必要であり、国内外の研究者と議論を行って検討を進める。研究協力者であるイタリア・ローマ大学のGiuseppe Bono教授との共同研究を進めるため、6月に3週間ほどローマに滞在する予定である。
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Research Products
(11 results)