2011 Fiscal Year Annual Research Report
バルクヘテロ接合型有機太陽電池におけるキャリアダイナミクスの解明
Project/Area Number |
23684021
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小林 隆史 大阪府立大学, 工学研究科, 助教 (10342784)
|
Keywords | 太陽電池 / 光物性 / 有機デバイス / 緩和過程 / 非線形分光 |
Research Abstract |
一般にバルクの有機材料では励起子束縛エネルギーは1eVと言われるが、ドナー性高分子とアクセプター性分子を混合させた薄膜では、室温で容易に励起子が解離し、高効率な光キャリア生成が可能になる。このような混合薄膜を用いた有機太陽電池をバルクヘテロ接合型有機太陽電池と呼び、近年精力的に研究が行われている。実用化に向け、さらなる高性能化を実現するためには、デバイス内部での失活を抑制することが不可欠であり、そのためには素子内部でのキャリア緩和過程を明らかにすることが必要である。 初年度はこの研究に必要となる光誘導吸収測定系の広帯域化、高感度化を図り、実デバイスでの測定を可能とし、開放条件と短絡条件での測定結果からキャリアの走行時間や移動度を決定する方法を確立した。その結果、一般的な組み合わせであるP3HTとPCBMを組み合わせた変換効率3%程度の太陽電池で、走行時間は数μ秒、移動度は10-5cm2V-1s-1程度であると見積もられた。以上の結果はフリーキャリアに対するものであるが、トラップされたキャリアについても寿命を決定することができ、また開放回路条件では、フリーキャリアは二分子再結合過程で、トラップキャリアは単分子再結合過程で緩和していることも分かった。 また、同時進行で有機太陽電池の高性能化と長寿命化についても検討した。特に長寿命化については、陽極バッファーとして酸化物を用いたり、あるいは仕事関数の低い電極材料の使用を回避するために逆構造の太陽電池の試作に取り組み、性能と寿命のバランスの取れた素子の作製に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初の予算執行の制約により、研究設備の構築に大幅な遅れが生じたが、後半は計画以上に順調に進み、予定の内容を達成することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
有機太陽電池の高性能化が十分に果たせていない(現状、P3HT/PCBM系で変換効率3.5%程度)。そこで新材料の導入を前倒しして行う予定である。
|