2011 Fiscal Year Annual Research Report
準安定相鉄系複合酸化物の特異な結晶構造を利用した新規触媒材料の開発
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23685046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
細川 三郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (90456806)
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Keywords | 準安定相 / 鉄系複合酸化物 / ソルボサーマル法 / 燃焼触媒 / ナノ粒子 |
Research Abstract |
希土類:鉄=1:1の組成(ABO_3型)の希土類-鉄複合酸化物では斜方晶ペロブスカイト型構造が安定相であるが、準安定相の六方晶構造のものも存在する。斜方晶ペロブスカイト型REFeO_3の鉄イオンは六配位構造であるのに対し、六方晶REFeO_3の鉄イオンは三方両錘の五配位構造という特異な配位構造を有している。しかし、従来法による複合酸化物合成では、高温での加熱過程が必須であるため、生成物の表面積は小さく熱力学的安定相しか合成できない。一方、水熱合成法の溶媒である水の代わりに有機溶媒を用いるソルボサーマル法では、焼成過程を経ることなく、極めて温和な条件で高表面積六方晶REFeO_3が合成できることを認めている。そこで、本研究では、鉄の持つ特異な配位構造を生かすことで、自動車排ガス処理用の触媒材料に求められるような高い酸素貯蔵能を持つ新規触媒材料の開発を目指す。 今年度は、異種元素を固溶させた六方晶YbFeO_3の合成および触媒特性の評価を検討した。その結果、1,4-ブタンジオール中でソルボサーマル合成したMn固溶六方晶YbFeO3はプロパンの燃焼反応に対して高い活性を有しており、貴金属触媒であるPd/Al_2O_3触媒より優れた性能を示すことを見出した。また、六方晶YbFeO_3にMnを固溶させることで酸素貯蔵能は大幅に向上し、作動温度500℃では六方晶構造が維持された状態で酸素の吸蔵・放出が迅速に行われていることを明らかにした。これらの結果から、本触媒は自動車排ガス処理用の触媒材料に求められる機能を有していることが認められた。 一方、ソルボサーマル法以外の常法では六方晶構造の合成は困難であった。しかし、焼成条件等の最適化を行うことで共沈法や錯体重合法でも六方晶構造を有する希土類-鉄複合酸化物が合成可能であることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の検討において、六方晶希土類-鉄複合酸化物への異種元素の固溶により触媒能の向上を達成することができた。そのため、本研究開始段階の目標はほぼ達成しているものと思われる。また、異種元素を固溶させた六方晶希土類-鉄複合酸化物では、高い酸素貯蔵能を有するなどの機能も明らかにすることができ、当初の計画以上に進展した成果を得ている。ソルボサーマル法以外でのYb以外の希土類元素による六方晶構造の合成は完了しているが、Yb以外の希土類元素からなる複合酸化物では触媒能の低下が認められており、その改善に対する検討が少し遅れているもののおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
異種元素固溶による六方晶希土類-鉄複合酸化物の触媒活性の向上に寄与する因子の解明を検討し、その結果をFeNbO4等への鉄系複合酸化物へフィードバックさせることで新たな触媒設計への展開について検討する。異種元素固溶六方晶希土類-鉄複合酸化物について、触媒担体としての新機能開発への展開についても検討する。
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Research Products
(13 results)