2012 Fiscal Year Annual Research Report
準安定相鉄系複合酸化物の特異な結晶構造を利用した新規触媒材料の開発
Project/Area Number |
23685046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
細川 三郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90456806)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 準安定相 / 鉄系複合酸化物 / ソルボサーマル法 / 燃焼触媒 / ナノ粒子 |
Research Abstract |
希土類―鉄複合酸化物(REFeO3)では、自動車排気ガス浄化触媒としても応用されている斜方晶ペロブスカイト型構造が安定相であるが、準安定相の六方晶構造のものも存在する。斜方晶構造のFe3+イオンは六配位であるのに対し、六方晶構造においてはFe3+イオンは五配位という特異な配位構造を有している。六方晶REFeO3はこのように独特な結晶構造を有しているにもかかわらず準安定相であるが故に合成が困難である。そのため、特殊な手法で合成された六方晶REFeO3においてもその応用例に関する報告は僅かである。そこで、本研究では六方晶REFeO3の特異な結晶構造を活かすことで、自動車排ガス処理用の触媒材料に求められるような特性を持つ新規触媒材料の開発を目指す。 前年度までにおいて、ソルボサーマル法による異種元素添加六方晶YbFeO3の合成および触媒特性の評価を検討した。その結果、ソルボサーマル合成したMn添加六方晶YbFeO3がプロパンの燃焼反応に対して高い活性を有しており、貴金属触媒であるPd/Al2O3触媒より優れた性能を示すことを見出した。さらに、従来はソルボサーマル法のような特殊な手法でしか六方晶REFeO3は合成できなかったのに対して、共沈法や錯体重合法においても焼成条件を最適化することで六方晶REFeO3が合成できることを見出した。 さらに、今年度においてソルボサーマル合成したMn添加YbFeO3の触媒活性はYbFeO3にMnを含浸担持したものと同等であることを見出した。この結果は、活性サイトがYbFeO3表面近傍に存在するMn種であることを示唆している。また、共沈法による六方晶REFeO3合成の更なる検討により、斜方晶REFeO3の高表面積化は極めて困難であったが、高い表面積を持つ六方晶REFeO3は合成可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の検討において、ソルボサーマル合成したMn添加YbFeO3の活性向上の要因が、YbFeO3表面近傍に存在するMn種であることを明らかにした。さらに、ソルボサーマル合成した六角板状の形態を持つ六方晶YbFeO3を触媒担体に用いた方が、錯体重合法により合成した不規則な形態のものを用いた場合より僅かに高い活性を示すことも見出した。そのため、本研究開始段階の目標はほぼ達成しているものと思われる。また、共沈法や錯体重合法による六方晶REFeO3合成の検討から、六方晶構造から斜方晶構造へ相転移が起こる過程で、斜方晶構造の結晶核が生成した直後に粒子が急速に成長するという挙動も明らかにした。この成果は、当初の計画以上に進展した成果といえる。一方、Mn添加YbFeO3の活性向上の要因を他の鉄系酸化物へフィードバックさせる予定であったが、Mn添加YbFeO3触媒の活性を上回る鉄系酸化物触媒は未だ見つかっておらず、その点が課題である。しかし、本研究課題全体の達成度としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
YbFeO3表面近傍に存在するMn種の配位構造をより詳細に検討し、その結果を新規な鉄系酸化物触媒の開発へフィードバックさせる。 前年度までは、触媒特性としてはプロパンの燃焼試験のみで評価を行ってきたが、本年度では、各種炭化水素(C3H6, C2H4, CH4, CO)の燃焼試験についても検討する。得られた結果から、Mn添加YbFeO3が有効に機能する炭化水素を明確にし、炭化水素を還元剤に用いたNOx分解への応用に展開する。
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Research Products
(8 results)