2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23686002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
一杉 太郎 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 准教授 (90372416)
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Keywords | 超薄膜 / 走査プローブ顕微鏡 / 太陽電池 / 環境材料 / 物性実験 |
Research Abstract |
原子レベル空間分解能で酸化物の電子状態を明らかにすることを考えたとき、その最も大きな障害は表面の処理である。これまでは単結晶を劈開する、あるいは表面をアニールして再構成表面を準備する、という二通りが主な表面準備法であり、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いた原子観察や局所状態密度測定が可能な酸化物材料は数限られていた。 本研究ではまず酸化物単結晶基板に着目した。従来は、表面のスパッタとアニールを繰り返して再構成表面を準備していた。しかし、これでは表面に酸素欠損が多量に入り、バルク酸化物本来の物性を反映しない表面になってしまう。そこで本研究では、化学エッチングとアニールを組み合わせて表面処理する方法を開発した。 これにより、ルチル型TiO_2(100)表面、および、SrTiO_3(100)-(√<13>x√<13>)表面の表面電子状態を精密に計測することが可能となった。これまでに報告されていない欠陥状態についても情報が得られ、原子構造の確定を目指して、第一原理計算グループと共同研究を進めている。 さらに、この基板上にSrTiO_3ホモエピタキシャル成長を行った。その結果、アイランド表面において、明瞭な(√<13>×√<13>)構造の観察に成功した。この構造の最表面層がTiリッチになっていることを考慮すると、界面においてコヒーレントエピタキシーが実現していることが示唆される。このような基板を用いることにより、酸化物薄膜の成長初期状態が原子レベルで明らかになり、透明導電性薄膜や強相関電子系薄膜の高品質化につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化物基板調製法を確立し、薄膜を作製することに成功した。さらに、その物性を明らかにすることができた。真に原子レベルで電子状態を明らかにすることができ、当初の計画どおりに進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化物薄膜の電子状態を極低温STMで探ることができるのは、世界で我々のグループのみである。そこで、この強みを活かし、透明導電性が期待できる薄膜の電子状態を原子スケール空間分解能で明らかにしていく。
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