2013 Fiscal Year Annual Research Report
水素環境における金属材料の破壊形態への材料/力学/環境因子の影響に関する研究
Project/Area Number |
23686022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 龍介 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80363414)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 破壊 / 分子動力学 / 水素脆化 / 格子欠陥 / ひずみ計測 |
Research Abstract |
本研究では,様々な水素脆化機構の競合の結果,最終的な破壊形態が材料/力学/環境的因子によってどのように決定されるのかを,電子・原子レベルのシミュレーション手法を駆使するとともに,水素脆化関連実験も合わせて行うことにより解明し,水素関連機器の安全設計に資することを最終到達目標としている. 本年度は〔1〕解析的な検討と〔2〕実験的な検討に関して以下の成果が得られた. 〔1〕解析的研究:前年度までに開発を行った単元系結晶中への水素の固溶量を第一原理的に評価する手法を発展させ,添加元素の影響も考慮できるようにした.また,実験的な評価が困難な広い環境での固溶水素濃度や原子空孔濃度の計算を行った.さらに,原子空孔の拡散挙動に及ぼす水素の影響を明らかにした. 〔2〕実験的研究:水素濃度の異なる試験片に対して,低ひずみ速度試験を行い,マイクロスコープにより変形部のその場観察画像を取得した.そして,得られた画像に対してデジタル画像相関法を適用することで,変形集中部でき裂生成に至るまでのひずみ分布とひずみ速度分布を捉えた.その結果,水素存在時には,局所的なひずみ速度がより早期に増加すること,き裂生成時のひずみが低下することを明らかにした.また,ナノインデンテーションにより水素が転位生成や硬さに及ぼす影響を検討するための,基礎的検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,水素環境における材料の最終的な破壊形態が材料/力学/環境的因子によってどのように決定されるのかを,電子・原子レベルのシミュレーション手法を駆使するとともに,水素脆化関連実験も合わせて行うことにより解明することを目的としている. 本年度も解析と実験を相補的に用いることで,それぞれの長所を生かした研究を実施した.例えば,実験的な評価が困難な広い水素環境条件(環境的因子)下で,材料中の水素固溶量と,それに伴う空孔濃度の増加を定量的に評価した.また,添加元素(材料的因子)の影響も考慮できるように手法を発展させ,その影響を調べた.一方,実験的には水素濃度の異なる試験片に対して低ひずみ速度試験を行い,変形集中部でき裂生成に至るまでのひずみ分布とひずみ速度分布の時間変化を捉えた.その結果,変形初期は水素の影響は小さいものの,変形が進むに従って局所的なひずみ速度が急増するかたちで水素の影響が顕在化することを明らかにした.これらについては,おおむね計画通りであり,本研究は順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,〔1〕解析的な検討と,〔2〕実験的な検討を適切に使い分けることで,研究目的達成に向けて研究を進める.また,研究成果の取りまとめを行い,積極的に発表を行う. 〔1〕解析的研究:解析対象の系の大きさや構成元素に応じて,第一原理計算(密度汎関数法)と原子間ポテンシャルによる計算を相補的に用い,以下の研究を実施する.(1)これまでに開発した,金属材料中の平衡水素濃度と平衡空孔濃度を評価する手法を用いて,より広範な材料系,水素環境条件での評価を行う.(2)力学的な負荷の下での平衡空孔濃度と,水素と添加元素の存在状態を上記1の手法を発展させることで評価する.(3)擬似的に水素の影響を考慮した原子埋め込み法ポテンシャルを用いて,様々な力学条件下で鉄の変形・破壊挙動に与える水素の影響について検討を行う. 〔2〕実験的研究:熱処理と水素チャージ条件を変更することで,水素濃度とその存在状態の異なる試験片を作成し,それらに対して低ひずみ速度試験を行う.この際,変形場をデジタル画像相関法を用いて可視化することで,水素の存在状態/濃度がき裂進展挙動に与える影響を明らかにする.また,炭素などの添加元素の濃度が異なる場合に,塑性変形の局所化挙動などがどのように変化するのかを明らかにする.
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Research Products
(25 results)