2013 Fiscal Year Annual Research Report
新世代治療抗体分野を切り拓く汎用的抗体多特異性化プロセスの開発
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23686118
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅野 竜太郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323103)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 癌 / 蛋白質 / バイオテクノロジー / 二特異性抗体 / ファージ提示法 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体医薬の併用は特にガン治療に於いて、安全性と治療効果を向上させることができるが、薬価の高さも大きな問題の1つであるため現実的ではない。本提案では、モノクローナル抗体に2つ目の特異性を付加させることで、併用投与と同等以上の効果を発揮する二特異性化抗体の開発を目指すと共に、申請者が開発してきた、二重特異性抗体と統合させることで、さらに付加価値の高い新世代治療抗体を創製することを目的としている。 前年度に引き続きEGFRとErbB3の両者に結合する二特異性抗体の創製を進めた。これまでに作製した抗EGFR抗体のVLに変異を導入したライブラリA(変異導入箇所14)、B(変異導入箇所10)、C(変異導入箇所3)を用いてErbB3強制発現CHO細胞を利用した選択操作を3ラウンド行った結果、ライブラリAのみ濃縮傾向がみられた。続いて、選択操作後のライブラリをそれぞれ大腸菌発現用ベクターに移し替えた後、配列解析を行ったところ、ライブラリAとCからはクローンの濃縮がみられた。各々大腸菌を形質転換後、菌体内上清画分を用いてフローサイトメトリーにより、 ErbB3強制発現CHO細胞、 EGFR強制発現CHO細胞、さらには正常なCHO細胞に対して結合活性評価を行った。結果、いずれも強い活性はみられなかったため、二特異性抗体の濃度がフローサイトメトリーで評価できる十分な量ではないと判断し、ELISAを用いた新たな評価系の確立を進めた。細胞の固定化条件等を検討した後、HRP標識した抗His-tag抗体を用いて検出を行うことで評価可能であることが示されたため、今後は本手法を用いて解析を進める予定である。 一方、前年度までに作製した4種類の配向性が異なるヒト型化抗CD16抗体を用いた二重特異性抗体に関して、それぞれ細胞傷害活性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまでに作製した抗EGFR抗体のVLに変異導入した3種類のライブラリと、オープンサンドウィッチ法を進めるために、既存の抗EGFR抗体VH変異体の中で有望なクローンに基づくFvを調製し、選択操作を進めた。結果、3種類のライブラリ共に異なる濃縮傾向がみられ、発現ベクターに導入後の配列解析に於いても、クローンの濃縮傾向には差がみられた。また実際にそれぞれのクローンを大腸菌を用いて発現させた際も、発現量にはライブラリごとに差がみられ、より変異導入箇所の多いライブラリから得られたクローンに発現量の低下がみられた。このようにライブラリごとに傾向が異なるため、複数のライブラリを準備することの重要性が示され、また今後実際に有望なクローンの選抜を進めることで、ライブラリをデザインする際の有益な情報が得られることが期待される。 一方、各クローンの結合活性を、形質転換させた大腸菌の超音波破砕液を遠心分離させた上清を用いて行ったが、フローサイトメトリーでは明確な活性はみられなかった。発現量が少なく、また夾雑物が多く含まれている影響等が考えられるが、新たな結合活性評価法を検討する必要があると感じ、予算を繰り越して研究を進めた。結果、標的抗原を提示させたCHO細胞を直接固定化させたELISA法を用いることで結合活性を評価できることが明らかになったため、今後は各クローンに関して網羅的に結合活性評価を進める予定である。 ヒト型化抗CD16抗体を用いた二重特異性抗体に関しては、これまでの二重特異性抗体とは、配向性とがん細胞傷害活性との相関が異なる結果が得られたが、標的とするリンパ球種が異なるため十分に想定できる結果であり、今後の詳細な解析に期待がもたれる。 以上の様に、当初の予定から進捗に応じて少し修正しているものの、研究全体としては大きな遅れは生じていないため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
フローサイトメトリーを用いた評価では結合が観察されなかったが、検討によりELISAを用いた評価が有効であることが明らかになったため、今後は各ライブラリから得られたクローンの網羅的な結合活性評価を進める予定である。またErbB3に対する結合活性評価に加えて、本来のEGFRに対する評価も行い、どの領域への変異導入が有効であるかなど、ライブラリの構築に際しての考察を深める。さらに本プロセスの汎用性を示すため、EGFRとHER2を標的としたEGFR/HER2二特異性抗体の取得を、EGFR/ErbB3二特異性抗体の開発で得られた条件および手法を用いて進める。既に選択に必要なHER2を強制発現させたCHO細胞は樹立しているため、EGFR/ErbB3二特異性抗体の調製時に用いた各ライブラリをそれぞれ利用した選択操作を行い、クローンの配列解析、濃縮クローンの選別、結合活性評価へと順次進める予定である。 一方、ヒト型化抗CD16抗体を用いた二重特異性抗体に関して、これまでに配向性の異なる4種類の分子を調製し解析を行ってきたが、これまでの二重特異性抗体とは、配向性とがん細胞傷害活性との相関が異なる結果が得られている。今後は細胞間の架橋能の観点からも解析を進め、取得した二特異性抗体を基盤とした新規ガン治療抗体を創製する際の組換え抗体の構造フォーマット、特に分子の配向性に関する知見も深める予定である。
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Research Products
(7 results)