2011 Fiscal Year Annual Research Report
触媒設計に基づく新しい選択性を発揮するアルコール酸化反応の開発
Project/Area Number |
23689001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渋谷 正俊 名古屋大学, 創薬科学研究科, 講師 (40359534)
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Keywords | 酸化触媒 / 有機分子触媒 / 有機合成化学 / ニトロキシルラジカル / アザノルアダマンタン |
Research Abstract |
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン N-オキシル(TEMPO)を用いる酸化反応は,第1級アルコールと第2級アルコールを併せ持つ基質において,第1級アルコール選択的に酸化反応が進行することが知られている.この選択性は,TEMPOの触媒活性部位であるニトロキシルラジカル部を覆う4つのメチル基の嵩高さによって発現するものと考えられている.第1級アルコール選択的酸化反応は,TEMPO酸化に特有の反応であるが,アルコールの酸化と共に水酸基を区別化できることから,多官能基を有する生物活性物質の合成において重要な手法となっている.そのため,TEMPO酸化より高活性で基質適用範囲の広い酸化反応が開発できれば,有用な反応となるはずである. 研究期間の初年度にあたる平成23年度は,これまでに開発したアザアダマンタン型ニトロキシルラジカルをはじめとする高活性ニトロキシルラジカル型酸化触媒に対して適切な立体要求性を触媒に付与することによって,高活性かつ第1級アルコール選択性を有する触媒の開発を行った.その結果,アザノルアダマンタン骨格を持つ新規触媒が,TEMPOよりも高活性かつ第1級アルコール選択性を有する触媒として機能する事を見出した.この触媒は,第1級アルコールが嵩高いネオペンチルアルコール等である場合に,TEMPOに比べその優位性が顕著であった. 本研究の途上で,1,2-ジオールからの一炭素減炭反応を伴うカルボン酸への2種のワンポット酸化的開裂反応を見出した.本手法は,これまで1,2-ジオールからアルデヒドへの酸化反応とアルデヒドからカルボン酸への酸化反応の2工程をかけて行われていた変換を1工程で行えることから合成化学的に重要であるため,基質適用範囲と反応機構について精査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい選択性を発揮するアルコール酸化触媒の開発を目的に,検討を行った.触媒への新しい選択性付与を目的として,立体要求性の制御と隣接官能基との弱い相互作用の利用を本研究期間中に試みる予定である.本年度は,立体要求性の付与によるアプローチによって,これまでTEMPOのみに限られていた第1級アルコール選択的酸化反応の開発を試みた.その結果,触媒の調製法などに改善の余地を残すものの,第1級アルコール選択的酸化反応を触媒する高活性触媒を見出した.特に,第1級アルコールからアルデヒドへの酸化では,TEMPOに対する明らかな優位性を確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度見出した第1級アルコール選択性を示す高活性ニトロキシラジカル型酸化触媒は,第1級アルコールからアルデヒドへの酸化反応について基質適用性が明らかとなってきた.そこで,次年度以降は,合成化学上重要な第1級アルコール選択的な第1級アルコールからカルボン酸へのワンポット酸化反応や酸化的ラクトン化反応についてその適用範囲を精査する予定である.また,触媒の合成法にも課題を残しているため,その改良にも取り組む予定である. また,分子認識を利用した選択的酸化反応についても触媒の合成法を確立し,隣接官能基による選択的アルコール酸化反応の開発について精査する予定である.
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