2012 Fiscal Year Annual Research Report
触媒設計に基づく新しい選択性を発揮するアルコール酸化反応の開発
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23689001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渋谷 正俊 名古屋大学, 創薬科学研究科, 講師 (40359534)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / アルコール酸化反応 / ジオール / ニトロキシルラジカル / 有機合成化学 |
Research Abstract |
多官能基化合物の合成にとって同一分子内に存在する複数の水酸基を区別化して変換する手法は重要である.本研究の初年度に当たる昨年度は,既知の酸化触媒であるTEMPOの第1級アルコール選択性発現メカニズムを参考にして立体障害を利用した触媒設計を行い,第1級アルコールと第2級アルコールが存在する基質において第1級アルコールのみを選択的に酸化する触媒の開発に成功した.昨年度の研究は,主に第1級アルコールからアルデヒドへの選択的酸化反応について検討を行なったため,本年度は,昨年度十分な検討を行っていなかった選択的な第1級アルコールからカルボン酸へのワンポット酸化反応や選択的酸化反応を利用した酸化的ラクトン化反応についても検討を行った.その結果,ワンポット酸化反応において,ごくシンプルなジオール基質に対しては,TEMPOが新たに開発した触媒に比べわずかに効率性で上回ったが,より複雑な基質およびネオペンチル位アルコールなどの立体的に込み合った第1級アルコールにおいてはその有効性が明らかとなった.酸化的ラクトン化反応においても,TEMPOに比べ短時間で反応が完結することが分かった 隣接官能基を利用するサイト選択的アルコール酸化反応の開発を目的として,分子認識部位を有するアザアダマンタン型ニトロキシルラジカルの合成を検討した.その結果,工程数や各工程の収率には改善の余地を残すものの,合成法の確立に成功した.ヘテロ原子を導入したニトロキシルラジカルは,しばしば安定性が問題となるが,新たに合成した分子認識部位を有する触媒は,安定に存在できることが分かった.次年度は,この触媒の酸化活性と選択性を明らかとし,新しい選択性を発揮する触媒の獲得を目指し触媒構造の最適化を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでの研究において,当初計画した研究のうち立体障害を利用した選択的触媒の開発に成功した.本年度明らかとなった,第1級アルコール選択的な第1級アルコールからカルボン酸へワンポット酸化反応および,選択的酸化反応を利用した酸化的ラクトン化反応は有機合成上重要な反応であることから,本研究で見出した高活性第1級アルコール選択的酸化触媒の有用性拡張に成功した.本研究においてもう1つ研究の柱となる分子認識を利用した選択的アルコール酸化触媒の開発に向け,合成ルートの開発に成功したことから,今後触媒の反応性を精査し,構造最適化を行う準備も整っているため.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において,分子認識を利用した選択的アルコール酸化触媒開発のための触媒合成法が確立できた.従って,次年度以降評価系を確立し,選択性と効率性を精査する.特に触媒中の基質認識部位と基質中の隣接官能基の相互作用について,種々検討を行う.その検討結果を受けて触媒構造の最適化を行う.触媒合成法は,確立できたものの改善の余地を残すことから,その改良も同時に行う.
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