2011 Fiscal Year Research-status Report
オンラインアルゴリズムの自動解析技術と設計支援システムの研究
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23700001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川原 純 北海道大学, 情報科学研究科, 学術研究員 (20572473)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | オンラインアルゴリズム / 競合比解析 / フレーム転送量最大化 / 自動解析 |
Research Abstract |
オンラインバッファ管理問題は、ネットワーク上のルータがパケットを転送する際、バッファにパケットを一時的に溜めておき、別の経路に送出する際、溜めたパケットに優先順位をつけて送出する最適化問題である。バッファ容量には限りがあり、バッファから溢れたパケットは破棄される。本研究では、動画データ等のフレームをk個のパケットに分割して転送し、フレーム内の全パケットの転送に成功したときに限りフレームが復元可能であるという設定で、フレームの転送数を最大化する問題(フレーム転送量最大化問題)を考えた。近年のインターネットでは動画や音声等のマルチメディアデータの取り扱いは不可欠であり、フレームの破棄を少なくするアルゴリズム設計は重要な課題である。この問題を、本研究のテーマである計算機による自動解析フレームワークを適用することでアルゴリズム設計に役立てた。競合比解析を行い、既存研究の競合比がkの2乗に比例する値であるところを、本アルゴリズムによってkに比例する値へ劇的に改善することができた(競合比はアルゴリズムの性能を表し、小さな値ほど良いアルゴリズムであるといえる)。さらに、これ以上は原理的に改善できないことも証明した。また、k=2の場合、フレームの一部を既に転送しているパケットを優先するという貪欲アルゴリズムの競合比が3であることを示し、そのアルゴリズムが最適である(これ以上改善できない)ことを証明した。貪欲アルゴリズムは実装が単純であるので、性能評価は実用上の意義も大きい。アルゴリズムの解析は場合分けが多数になり、複雑であったため、自動解析の手法が重要であった。本結果は2つの論文としてまとめ、それぞれ著名な国際会議に投稿中である。また、kサーバ問題の計算機による自動解析について、検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、オンラインバッファ管理問題のアルゴリズムの設計を行うことができた。自動解析の汎用化に向けて、本技術の適用例を増やすことができた。このため、計画はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り、kサーバ問題について、自動解析の手法を用いた競合比解析を行う。kサーバ問題は、平面上にk個のサーバが配置されており、ある場所にサービスの要求が次々と与えられ、そのたびにいずれかのサーバをその場所に移動させることを考える問題である。移動距離の最小化が目的である。kサーバ問題の競合比の最悪値はkであるという予想がなされているが、その予想の証明がオンラインアルゴリズムの分野の1つの有名な未解決問題である。予想に近づく結果を得ることが当面の課題である。kサーバ問題に本手法を適用することを通じて、本手法の一般化、汎用化を検討する。また、フレーム転送量最大化問題については、k of nと呼ばれる、n個のうちk個のフレームの転送に成功すればフレームが復元可能であるという、より現実的な設定を考えることができ、こちらについても検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度後半に予定していた研究打ち合わせ(情報資料収集)が平成24年度に延期されたため、平成23年度に未使用額が発生した。平成24年度でその旅費に使用する。
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