2012 Fiscal Year Research-status Report
オンラインアルゴリズムの自動解析技術と設計支援システムの研究
Project/Area Number |
23700001
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
川原 純 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (20572473)
|
Keywords | アルゴリズム / オンライン問題 / 競合比解析 / ユニットクラスタリング / 自動解析 |
Research Abstract |
本年は主にオンラインユニットクラスタリング問題に取り組んだ。オンラインユニットクラスタリング問題は Chan らによって定式化された問題で、平面上(一般にn次元ユークリッド空間)の任意の場所に1つずつ点が与えられ、そのたびにクラスタと呼ばれる長方形(一般にn次元直方体)で点を覆わなければならない。一度配置したクラスタは平行移動することはできないが、縦横の長さが各1まで伸ばすことはできる。アルゴリズムは新しいクラスタを割り当てるか、既存のクラスタを伸ばすかを選択する。この問題はクラスタの数の最小化を目的とするオンライン最適化問題である。この問題は施設配置計画問題やデータマイニングなどに応用を持つ。この問題について、従来は競合比の下限(これ以上は改良不可能という限界値)が 8/5 であることが知られていたが、本研究のテーマである計算機による自動解析フレームワークを適用することで、この値を 13/8 に改善することができた。その証明で用いられる手法は、手動による証明は複雑で困難であり、自動解析手法が役立ったと言える。また、点が過去に現れた場所に近接した場所に与えられるという制約を仮定することで、競合比の上限が 13/8 であるアルゴリズムの設計を行い、数学的に解析するのに成功した。この仮定を設けない場合、証明がさらに複雑になることが想定され、自動解析手法が役立つものと思われる。本結果は、国際会議への投稿中に向けて、論文としてまとめている最中である。 本年はさらにkサーバ問題について、自動解析の手法を用いた競合比解析を試みた。kサーバ問題に対して、自動生成を行うための状態設計を行ったが、状態の種類数が爆発的に大きくなるため、計算機で扱える個数にするためのさらなる工夫が必要なことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、オンラインユニットクラスタリング問題のアルゴリズムの設計を行うことができた。自動解析の汎用化に向けて、本技術の適用例を増やすことができた。このため、計画はおおむね順調に進んでいるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はオンラインユニットクラスタリング問題について、点が過去に現れた場所に近接した場所に与えられるという仮定の無い一般的な場合について自動解析を行う。用いるアルゴリズムは仮定のある場合と同様であるが、考慮しなければならない場合の数が増えるので、その部分について自動解析を用いる。さらに、kサーバ問題について、自動解析の手法を用いた競合比解析を行う。kサーバ問題は、平面上にk個のサーバが配置されており、ある場所にサービスの要求が次々と与えられ、そのたびにいずれかのサーバをその場所に移動させることを考える問題である。移動距離の最小化が目的である。kサーバ問題の競合比の最悪値はkであるという予想がなされているが、その予想の証明がオンラインアルゴリズムの分野の1つの有名な未解決問題である。予想に近づく結果を得ることが当面の課題である。前年度に引き続き、kサーバ問題に本手法を適用することを通じて、本手法の一般化、汎用化を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定していた情報収集、研究発表のためのセミナー、学会参加が平成25年度に延期になったため、平成24年度は未使用額が生じた。 次年度は論文発表や情報資料収集のための国際会議旅費、参加費や、英文校閲代や論文別刷代等、論文出版に必要になる経費の支出を予定している。
|