2012 Fiscal Year Research-status Report
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23700004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森山 園子 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20361537)
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Keywords | 線形計画問題 / LPグラフ / 有向マトロイド / マトロイド / 多面体理論 |
Research Abstract |
線形計画問題(LP)のピボットグラフの振る舞いを記述したグラフをLPグラフという。1947年に提案された単体法以来の未解決問題である,同問題を解く多項式時間ピボット規則の存在を解明するうえで,LPグラフ上でのピボット規則の解析が不可欠となる。しかし,一般にはLPグラフが特徴付けられていないため,LPグラフの集合を真に含む非巡回唯一シンクグラフ(AUSO)上で解析が行われてきた。今年度は,以下4点の研究を進めた。 第1に,一連の履歴依存型ピボット規則をd次元超立方体のAUSO上で解析した[Aoshima, Avis, Deering, Matsumoto, Moriyama (2011)]について,その詳細を記したジャーナル版を公表した。 第2に,有向マトロイド理論を通じてLPグラフを列挙するにあたり,有向マトロイドの疎構造であるマトロイドの構造を解析し,マトロイドと有向マトロイドの差を示す向きづけ可能性を解明した。また,有向マトロイドと幾何構造の差を示す実現可能性について,これまでの一連の研究成果を記したジャーナル版を公表した。 第3に,一般には特徴付けられていないLPグラフについて,d次元多面体がd+2頂点から成るとき,[Avis, Moriyama (2009)]で提案したシェリング性で特徴付けられることを示した。 第4に,任意のピボット規則の回数の下界を与える多面体の直径について解析し,LPグラフの土台となる超平面配置に内在する多面体の直径の平均に関する予想を部分的に解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,以下2つの方向性で研究を進めた。 第1に,昨年度に引き続き,有向マトロイド理論を通じてLPグラフを列挙する方法を考案することを目標に研究を進めた。有向マトロイドの理解を深めることを目的に,有向マトロイドの疎構造であるマトロイドと有向マトロイドの差を示す向きづけ可能性を解析し,向き付け不可能な2つの無限列を発見した。本結果は,ランク3のマトロイドでは任意の要素数において向き付け不可能なマトロイドが存在することを示しており,有向マトロイドとマトロイドとの本質的な差に言及した最初の結果と言える。 第2に,LPグラフの線形性を明らかにすることを目標に研究を進めた。LPグラフの一般的な特徴付けは得られていないが,LPグラフが満たす性質については,非巡回性,唯一シンク性,Holt-Klee性および[Avis, Moriyama (2009)]で提案したシェリング性が知られる。特徴付けが可能なLPグラフの部分集合として,d+2頂点を持つd次元多面体上のLPグラフがシェリング性で特徴付けられることを示した。特徴付けが可能な既存の部分集合は多面体の次元を固定したものであり,本結果は多面体の次元を固定せずに特徴付けを与えた最初の結果と言える。 第3に,多面体の直径に関する一連の予想を明らかにすることを目標に研究を進めた。多面体の直径は任意のピボット規則の回数の下界を与える。LPグラフの土台となる超平面配置に内在する多面体の直径の平均に関する平均ヒルシュ予想を部分的に解明した。多面体の直径の最大値に関するヒルシュ予想については,1957年の提案から50年以上経った2010年に反例が発見されるというブレークスルーがあった。本結果は平均ヒルシュ予想の成立・不成立に言及した訳ではないが,同予想に関する部分的な解決としては最初の結果であり,同予想の解決の第一歩となる足掛かりを与えたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度の研究結果を土台にして,一連の履歴依存型ピボット規則のLPグラフ上での振る舞いの解析する本研究課題の目標に向かって研究を進める。 第1に,履歴依存型ピボット規則の具体的な振る舞いを調べるため,LPグラフの大規模な列挙を行う。LPグラフを列挙するうえで,実現可能な有向マトロイドを列挙する必要がある。一昨年度に構築したマトロイドの大規模な列挙法を土台として,実現可能な有向マトロイドを列挙することを目指しているが,マトロイドと有向マトロイドの差を埋めるうえで,本年度進めたマトロイドと有向マトロイドの差を示す向きづけ可能性の解明は重要となる。今後は,これまでの研究成果を統合し,有向マトロイド理論を通じたLPグラフの大規模な列挙に迫る。 第2に,LPグラフ上での履歴依存型ピボット規則の理論解析において必要となるグラフにおける線形性を解明する。LPグラフの一般的な特徴付けは得られていないが,LPグラフが満たす性質については,非巡回性,唯一シンク性,Holt-Klee性および[Avis, Moriyama (2009)]で提案したシェリング性が知られる。3次元LPグラフは非巡回性,唯一シンク性,Holt-Klee性で特徴付けられるが,4次元以上のLPグラフはこれら3つの性質では特徴付けられないことが知られる。そこで,4次元以上のグラフの線形性について,シェリング性との関連も含め,明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様に,調査研究を広く実施すると共に,国内外を問わず積極的に成果発表を行うため,旅費の使用を予定する。外国旅費は,福田公明教授(スイス連邦工科大学),Antoine Deza教授(McMaster大学),David Bremner教授(ニューブランズウィック大学)をはじめ,申請者がこれまで共同研究を行ってきた数々の海外研究者との交流を通じて情報収集を行うため申請する。充実した議論を遂行するため,各年度で十分な議論を可能にする渡航のための旅費とする。また,従来通り,David Avis 教授(京都大学)をはじめとする国内研究者との共同研究や国内会議への参加を検討するため,その出張が可能となる国内旅費を予定する。 消耗品は,各年度で必要となるバックアップ費およびプリンタ用品等の使用を予定する。更に,国内雑誌投稿の際に必要となる論文投稿料および会議参加の折に必要となる会議費について,各年度で同額を申請する。
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Research Products
(6 results)