2011 Fiscal Year Research-status Report
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23700023
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
荻田 武史 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00339615)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 情報基礎 / アルゴリズム / 数値計算 / 行列解析 / 高精度計算 |
Research Abstract |
初年度は、ロバスト行列分解アルゴリズムを設計する際の突破口と成り得る具体的な問題を取り上げて、それらの問題に対する数値計算アルゴリズムを構築した。具体的には、対称正定値行列に対するロバスト逆Cholesky分解のアルゴリズムについて研究した。基本方針は、既存の高速かつ安定性のある数値計算ライブラリ(BLAS、LAPACK など)を可能な限り有効活用し、必要となる高精度演算については、これまでに開発してきたアルゴリズムをベースとして、内積計算や行列乗算に限定した効率の良い方式を考案することである。これは、開発するアルゴリズムの汎用性の点においても重要である。また、ロバスト逆Cholesky分解を利用した対称行列の正定値性の保証法についても研究した。本年度の研究実績をまとめると、以下の通りである。まず、ロバスト逆Cholesky分解のアルゴリズムを考案し、数値実験によって提案アルゴリズムの有効性を検証した。前述のアルゴリズムの開発と並行して、高精度演算を用いた効率のよい行列乗算アルゴリズムを開発し、数値実験によってその有効性を検証した。また、これらの研究成果について学会発表・他研究者と議論した。そのようにして議論した内容を考慮しながら、研究成果についてそれぞれまとめ、論文発表した。本研究で開発したアルゴリズムを用いると、入力された行列が非常に悪条件な場合においても、安定した行列分解を実行することが可能となり、また、その行列の正定値性を数学的に保証できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、順調に進展している。具体的には、(1)ロバスト逆Cholesky分解のアルゴリズムの考案と(2)高精度演算を用いた効率のよい行列乗算アルゴリズムの開発を行った。(1)については、既存の数値線形代数ライブラリを活用して高精度な結果を得ることができるまで反復計算によって演算精度を高めることができる適応的かつ効率的なアルゴリズムの開発に成功した。(2)については、こちらも既存の最適化された線形計算ライブラリを有効に利用しながら、任意に精度の高い結果を得ることが可能な高速かつ高精度な行列乗算アルゴリズムの開発に成功した。これらの研究成果を学会等で発表し、コメントのフィードバックや他研究者との議論を踏まえた上で研究の質をさらに高め、(1)と(2)のそれぞれについて論文投稿を行い、いずれも最終的に採録され出版された。このように、研究計画に沿って研究を推進できていることがわかる。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り研究は推進されているため、今後も研究計画に沿って推進していく。具体的には、次年度は固有値分解、特異値分解に関するロバストな逆行列分解アルゴリズムを開発する。対称系の固有値分解や特異値分解は、直交行列(ユニタリ行列)による変換に基づくため、これを前処理として適応的に行列の条件数を下げることはできない。その点において従来の逆LU分解・逆QR分解や今年度に開発した逆Cholesky分解などとは異なる解析が必要である。まずはこれに重点を置いて研究を推進する。さらに、ここまでの結果をもとに、それらを統合する行列分解アルゴリズムの体系を構築する。また、ここまでに開発したアルゴリズムの並列化(共有メモリ型並列、分散型並列)についても検討する。特に、近年のCPU やGPU のマルチコア・メニーコア技術の発展を考慮した、ハイブリッド型並列計算向けのアルゴリズム開発に重点を置く。また、それと並行して、提案アルゴリズムの効率化を高めるために、行列乗算の高精度演算に関する研究も継続して推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費では、前年度未使用分と合わせて、アルゴリズムを開発する際に行う数値実験用の計算機を購入する。研究内容の一部で、最新のハードウェアが利用可能になるとさらに効率が改善されることが期待できる箇所があるが、ハードウェアの供給が予定よりも遅れており、そのためこのような措置とした。旅費では、国内での発表を数回行う予定である。その他、数値実験に必要なソフトウェアや研究実施に必要な専門書を購入する。
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