2013 Fiscal Year Research-status Report
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23700023
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
荻田 武史 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00339615)
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Keywords | 数値線形代数 / 行列分解 / 高精度計算 / 悪条件問題 |
Research Abstract |
平成25年度については、前年度までの結果をもとに、それらを統合する行列分解アルゴリズムの体系を構築することが目的であった。これを達成するために新しい高精度な行列分解のためのアプローチを導入し、実際に対称系の固有値問題に対する高精度な反復計算アルゴリズムを提案した。これは、これまでに開発してきたロバストな行列分解アルゴリズムとは異なり、ニュートン法と同様に、反復毎に結果の精度を2乗のオーダーで改善することができる画期的な方法である。そして、この方法と、これまでに開発してきた行列分解アルゴリズムを統合することにより、ロバストかつ非常に高精度な行列分解が可能となる。 また、これまでに開発した対称正定値行列に対するロバスト逆Cholesky分解のアルゴリズムの改良を行い、理論的な解析及び数値実験によって、そのアルゴリズムの有効性を確認した。 また、上記と並行して、提案アルゴリズムの効率化を高めるために、行列乗算の高精度演算に関する研究も継続して推進した。 また、対称不定値行列に対する代表的な行列分解法について、その行列分解の結果に対する後退誤差解析を行い、高速に行列分解の誤差限界を得るための方法を示した。 さらに、特殊な構造を持つ行列を係数とする線形方程式に対して、近似解の持つ精度を高速に評価するアルゴリズムを提案し、論文発表を行った。本提案方式にもロバストな行列分解アルゴリズムを適用可能であり、一般の密行列系に対する線形方程式をロバストに解くことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、条件数の大きさに関わらず、問題を高精度かつ高効率に解くことができる数値計算アルゴリズムの体系を構築することである。そのために、数値線形代数におけるロバストな行列分解アルゴリズムの開発を推進している。 具体的には、対称正定値系の行列に対するCholesky分解や、一般行列に対する特異値分解、対称行列系に対する固有値分解などに関してロバストなアルゴリズムを開発し、これらを統合する新しいアルゴリズムの体系を構築することである。 これに対して、対称正定値系の行列に対するCholesky分解アルゴリズムや対称行列に対する固有値分解の高精度なアルゴリズムの開発に成功している。 すなわち、当初の研究計画に沿って、毎年度研究成果を出すことができているため、本研究課題の進捗状況は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、最終年度として、これまでに構築してきた行列分解アルゴリズムの体系を一般化Schur分解や一般化固有値問題などにも適用可能であることを示していく。具体的には、本研究で開発してきたアルゴリズムと同様に、行列分解アルゴリズムを適用しながら、行列分解の種類によって現れる特有の問題に対処し、適用範囲を拡張していく。 また、理工学に現れる物理現象の多くの問題においては、解析対象モデルを有限差分法や有限要素法などによって離散化し、得られる係数行列が疎行列となるため、疎行列向けのロバスト行列分解法についても検討する。具体的には、これまで開発してきた密行列向けのアルゴリズムを疎行列向けに変更するための方法論を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
開催予定であった国際会議について、昨今の国際関係の事情により次年度に見送ったため。 次年度分は、主に研究成果発表のための旅費として研究費を支出する。 旅費は、次年度に見送った国際会議に参加するための費用及び研究成果の発表や研究に関する情報収集のため、研究出張の費用として使用する。
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Research Products
(8 results)