2012 Fiscal Year Research-status Report
1ビット個別駆動パラメトリックスピーカを用いたアコースティックプロジェクタ
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23700151
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
武岡 成人 静岡理工科大学, 理工学部, 講師 (30514468)
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Keywords | パラメトリックスピーカ / 超多チャンネル信号処理 / 音響立体再生 |
Research Abstract |
前年度に作成したパラメトリックスピーカ装置を用い,本年度は壁面反射システムの試作・測定実験と2項分布を用いたマルチビーム出力手法の検討を行った。その結果として充分曲率半径の大きい反射壁と提案手法のパラメトリックスピーカを用いることにより複数かつ任意の方向から音響ビームを到来させる音場再生システムを構築することができた。 1.円弧状の壁面反射を利用した音源位置制御 パラメトリックスピーカはその極めて鋭い指向性から出力が壁面に対して概ね鏡面反射し,反射波上にいる受聴者は反射点から音が到来していると感じる事ができることが知られている。そこで円弧状の壁面を作成し,その中心から提案手法の指向性制御可能なパラメトリックスピーカで出力し,反射波が集中する受聴点において所望の方向から音響ビームを到来させる実験を行った。具体的には半径170cmの円筒状(高さ92cm)の反射壁を作成し出力方向を5°毎に変えていったところいずれも所望の方向から反射波が到来していることを確認した。 2.2項分布出力を用いたマルチビーム出力法 提案するシステムにおいては出力する音響ビームのサイドローブがそのまま虚像となってしまう。そこでパラメトリックスピーカのアレイ出力に2項分布を導入することによりサイドローブを抑圧する手法を提案・検討した。2項分布アレイ出力によりサイドローブは抑圧されるが1音源出力のパラメトリックスピーカにおいてはメインローブのレベルが低減し利点は少ない。一方本研究では指向性制御により多方向に音響ビームを出力することを目的としている。そこでアレイ内での各ビームの出力分布位置をずらし重ね合わせる配置とすることにより総出力レベルの低下を抑えつつ各ビームのサイドローブを低減させる手法を検討した。その結果3ビーム出力時にシミュレーションで10dB,実測で3~4dB程度のサイドローブ抑圧効果が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は壁面反射型3次元音場再生システムにおける反射壁の検討とマルチビーム出力法の検討を行った。研究遂行上での位置づけとしては,提案するシステムの基礎技術の有用性を確認した。指向性制御されたパラメトリックスピーカの音響出力ビームは充分な曲率半径を持つ反射壁面に対して概ね鏡面反射することがわかり,受聴点に対して任意の方向から音響ビームを到来させることが可能であることを実験により確認することができた。また2項分布をアレイ信号処理に導入することによりマルチビーム出力時の各ビームのサイドローブを抑圧することができ,このことは提案システムにおける虚像を抑圧したことになる。これらの成果によりビーム出力から反射までの環境を整えることができたと判断した。一方で予定していた再生波面の合成に関する理論面では進展が少なかったことから概ね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果として充分曲率半径の大きい反射壁と提案手法のパラメトリックスピーカを用いることにより複数かつ任意の方向から音響ビームを到来させる音場再生システムを構築することができた。本研究の目的はこれらシステムを用いてシームレスな立体音場を再生しようというものであることから平成25年度は再生波面について検討を進める。本手法は反射波面を受聴点で重ね合わせることから広義の波面合成法の一種と考える事が可能である。しかしながら,再生波が平面波の重ね合わせである点において通常の点音源を想定する波面合成法と異なっている。そこで平面波合成時の波面の再現性に関して計算・実験を進めて行く。具体的にはCTの様に平面波の面積分による対象範囲内での波面合成を行う手法を確立し,また現在の再生装置では出力ビーム数が有限であることから再生ビーム数と最適な出力方向の条件を算出する。それらに関して前年度までに作成した再生環境を用いて実測実験を行い提案手法の有効性を確認する。提案手法の評価に際しては範囲内の音場を測定する必要があることからマイクアレイシステムを作成する。これは提案手法の録音装置としての利用も考慮することから通常のマイクロホンの走査によるものではなく,多チャンネルのマイクアレイの構成のものとする。またそれら研究の成果報告を積極的に行っていく。本手法では極めて鋭い指向性の波の重ね合わせであることから通常の波面合成法と比較して極めて小規模な構成で音源位置,すなわち提案手法における反射壁より受聴者よりに仮想音源を再現できる可能性があることからそれらの検討も併せて進めて行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
評価用のマイクアレイシステムの材料費,及び上下方向も考慮した壁面の製作費,実験用パラメトリックスピーカの固定用治具の製作費にあてる。また成果報告としての論文投稿費,学会発表旅費にあてる予定である。
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Research Products
(3 results)