2011 Fiscal Year Research-status Report
歌声の生理・音響的特徴の操作に基づく高度な歌声合成
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23700197
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
齋藤 毅 金沢大学, 電子情報学系, 助教 (70446962)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歌声合成 / 音響分析 / 発声学 / 聴覚心理 / 物真似歌唱 |
Research Abstract |
本年度は,歌唱データベースの構築,及び多様な歌唱データを対象とした音響分析と分析結果に基づく歌声合成システムの改良を行った. 歌唱データベースの構築においては,昭和音楽大学の協力のもと,オペラ歌唱(ソプラノ,メゾソプラノ,テノール)とポピュラー歌唱の収録を行い,プロ/アマチュア歌唱者30名による歌唱300トラックを収録した.自由に使用できる歌唱データベースが少ない現状で,本データベースは本研究課題を進める上で非常に有用なものである.次年度以降も,データベースの規模を拡大する予定である. 歌声の音響分析では,(1)歌唱者の個性を規定する音響特徴,(2)歌唱スタイル毎のヴィブラート特性の差異,(3)歌声の自然生を規定する音響特徴についてそれぞれ調査した.(1)に関して,歌唱時の物真似による音響特徴の変化を調査した結果,歌唱者毎に個性を規定する特徴が異なり,更にはその特徴を誇張する操作を施すことで個性を表現可能な事が明らかとなった.(2)については,3種の歌唱スタイル(オペラ,ポピュラー,演歌)を対象に分析を行い,スタイル毎にヴィブラート特性が異なる傾向を確認した.また,それらの特性を表現可能なヴィブラート制御方法を構築した.(3)では,音高遷移直後に観測されるオーバーシュートと呼ばれる特徴についての生理・音響的な分析を行い,この特徴が声帯制御の制約によって生じる物理現象であり,歌唱合成において合成音の自然性を生み出す役割を担っている可能性を確認した. 以上の結果は,本研究課題の最終目標である高品質で多様な歌声を合成する為に有益なだけでなく,歌声の知覚・生成機構を理解に資するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高品質で多様な歌声合成を実現するための基礎的検討を勧めた.「9.研究実績の概要」で報告した通り,今年度の目標としていた,様々な歌唱の音響分析,及び歌唱データベースの作成を遂行した.いずれも,ほぼ計画した通りの進捗であった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き,多様な歌唱データの音響分析,及び歌唱データベースの構築を進める. 音響分析に関しては,今年度の実験結果で得られた様々な特徴の知覚的な影響も検討する.具体的には,各特徴を操作した歌声合成を行い,操作による歌声の知覚的印象の変化を調査する. 歌唱データベースに関しては,今年度収録したオペラ歌唱,ポピュラー歌唱に加えて,演歌や民謡などの邦楽歌唱の収録も行い,データベースにおける歌唱スタイルの充実化を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品として,聴取実験に必要な備品(ノートPC,オーディオアンプ,ヘッドホン)を購入する.また,実験に必要な消耗品として,オーディオケーブルや記録メディアを購入する. また,データベースの収録,及び学会発表(国内外)の関する旅費として,及び聴取実験時の被験者に対する謝金としてそれぞれ使用する.
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Research Products
(3 results)