2011 Fiscal Year Research-status Report
欠損データにロバストなウェアラブルセンサを用いた行動認識技術の開発
Project/Area Number |
23700230
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
大村 廉 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10395163)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 行動認識 / センサネットワーク / 欠損データ補完 / パターン認識 |
Research Abstract |
本研究は,複数の加速度センサを利用する行動認識技術において欠損データにロバストな認識手法を開発することを目的とする.具体的には,現在の行動認識技術では,あらかじめ想定されたセンサの個数から1つでもセンサの接続ミスや故障が生じた場合に全くその認識結果が得られなくなる,という問題を解決する.この問題は,行動認識が機械学習に基づくパターン認識の技術を利用することに起因し,センサデータベクトルの要素や,特徴量ベクトルの要素が学習時と認識時で異なるにことにより生じる問題である.本プロジェクトでは,これらのベクトルの要素を補完,あるいは,あらかじめ少ない要素に適合する識別器を作成することでこの問題を解決しようとしている. 平成23年度は,まず,特徴量を補完する手法について評価を行った.具体的には,特徴量を補完する手法として,重回帰,およびカーネル回帰によって他に得られた特徴量から欠損した特徴量を推定する手法を用いた.また,予め人工的にデータ欠損させた特徴量ベクトルを用いて学習を行った識別器を複数作成し,これら識別器を状況に合わせて選択して利用する手法の評価を行った.そしてこの評価結果を,欠損が生じない場合における行動識別率と比較した. 8種類の日常行動を対象とした評価実験の結果,各行動のF値の平均は,欠損無しの場合は0.750,重回帰を用いた特徴量補完を行った場合は0.726,カーネル回帰による特徴量補完を行った場合は0.734,予め特徴量を欠損させた特徴量により学習した識別器を用いた場合は,0.723となった.大きな差とはならなかったものの,欠損が生じたデータで学習させた識別器を用いるよりは,なんらかの手法で特徴量補完を行った方が良いことが分かった.また,特徴量補完を行う場合,重回帰による手法よりもカーネル回帰を用いる手法の方が優れていることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本プロジェクトにおける,現在の進捗状況として,現状では約40%が完遂(平成23年度単年度の完遂状況では80%,少し遅れ気味だが挽回可能な程度)していると考えている. 本プロジェクトでは,研究計画において,センサデータの欠損に対し「1a)時間的相関関係によるセンサデータの補完」,「1b)空間的相関関係によるセンサデータの補完」,「2a) 時間的相関関係による特徴量の補完」,「2b) 空間的相関関係による特徴量の補完」,「3a) センサ毎の識別器を統合する手法」,「3b) 予め人工的にデータを欠落させて各状況の識別器を作成しておく手法」,「4) 前後の認識結果から補完する方法」次の7種類の手法で対応することを検討している.このうち,平成23年度は1b),2b),3a),3b)の手法について検討することを目標とした. 平成23年度において,2b)および3b)については具体的な評価をすでに済ませている.1b)は,手法としては2b)と同じであり,重回帰を用いた基礎検討を行ったところ,次の2つの問題が生じることが分かった.1つは,ウィンドウ内のセンサデータ1つ1つを補完していく手法のため,回帰モデルの作成に非常に計算資源(CPU能力およびメモリ)を必要とすること.もう一つは,粒度が細かすぎてデータ間の相関性が表れにくく,回帰を行ったときに残差が非常に大きくなる,ということである.定量的な評価は行っていないものの,これらの理由から本プロジェクトにおいて1b)に対する検討は一旦停止し,他を優先することとした.また,3a)についてはその手法の検討を済ませており,すでに実装を開始している. このため,計画より多少の遅延はあるものの,平成23年度における計画は概ね達成できており,遅延に関しても,平成24年度において十分に挽回可能な程度と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,平成23年度の研究成果をまとめ,研究会にて発表を行う予定(すでに確定済み)であり,国際会議および論文誌へもそれぞれ1~2本づつ投稿を行う予定である.また,このような発表活動において他の研究者との議論により得られた内容は,随時,以下に述べる研究作業に反映させるようにする. 研究作業自体としては,平成24年度は平成23年度に予定していた内容を完了させるとともに,計画書において計画していた内容を遂行する.具体的には,「現在までの達成度」において記した検討事項のうち,平成23年度に終了しなかった「3a) センサ毎の識別器を統合する手法」について評価を行って完遂させる.以降,「1a)時間的相関関係によるセンサデータの補完」,「2a) 時間的相関関係による特徴量の補完」,「4) 前後の認識結果から補完する方法」について検討を進めていく. なお,このうち4)を優先的に進めていくこととする.その理由として,1a)については「現在までの達成度」で述べた1b)の問題と同様の問題が発生する可能性が生じる可能性がある.加えて実際のセンサデータのエラーを考慮した場合,センサデータエラーはバースト的かつ比較的長時間にわたって生じる可能性があり,時間方向での補完では長時間にわたるエラーが生じた場合に対応しきれない(確率的,あるいは回帰を用いて補完を行ったとしても,誤差が蓄積してしまう)可能性がある.これは2a)の手法でも同様であり,このため,1a),2a)については基礎検討段階での様子を見てその適応可能性を十分に見積もることにし,その結果に柔軟に対応できるようにする.一方でこれらの問題が生じにくいと思われる4)を着実に遂行するようにする. これらの研究における成果は可能な限り平成24年度中にまとめられるようにし,研究会,国際会議での発表を行うとともに,論文誌への投稿も行うようにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度において,ある程度の研究環境は整えたものの,本プロジェクトで検討している各種手法は処理スピードおよび容量ともに当初の予想を上回って計算資源を必要とすることが分かった.このため,本年度においても計算機環境の増強を行うこととする.この時,新たに計算機を購入する形ではなく,なるべく既存の計算機を増強する形で行うようにする.また,データについても,取得済みのセンサデータはいくつか不備があることが分かっており,既得のデータを利用するとともに,新たにデータ収集に努める.このためのデータ取得環境(センサおよび端末)および,データ保存環境についても増強する.これの設備増強については7月から8月を目途に完了させ,その後のデータ取得および評価実験につなげられるようにする.(約450千円) また,8月後半から10月上旬を目標とし,追加の実際のデータ取得を行う.ある程度大規模なデータ取得および処理が行えるよう,実験補助,データ整理等に人件費を割り当てることにする.(約550千円) 「今後の研究の推進方策」で述べたよう,平成23年度の研究成果を積極的に外部発表していくとともに,平成24年度における成果も早い段階で発表できるよう準備を進める.このため,発表および情報収集目的を併せ,年5回程度の国内研究会への参加(国内出張,約300千円)と2回程度の国際会議への参加(国外出張,約700千円)を予定する.国際会議については,その投稿ための英文校閲費も用意するようにする.加えて,論文投稿も2編程度行えるようにし,このために論文別刷り代も予定する.(約320千円)
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Research Products
(2 results)