2012 Fiscal Year Annual Research Report
がん幹細胞と血管内皮前駆細胞に照準を定めた悪性脳腫瘍に対する分子標的治療法の探索
Project/Area Number |
23700424
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
深井 順也 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (50543774)
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Keywords | 悪性脳腫瘍幹細胞 / 血管内皮前駆細胞 / がん分子標的治療 |
Research Abstract |
本研究の目的は、悪性脳腫瘍幹細胞と血管内皮前駆細胞に着目し、これらに共通する細胞内シグナル伝達分子の発現を解析して新しい分子標的治療戦略として有望な標的分子を探索することである。 本研究の主要検討課題は悪性脳腫瘍幹細胞研究と血管新生研究とに大別できるが、その実施計画に従い平成23年度は悪性脳腫瘍幹細胞研究を実施した。まず、悪性神経膠腫の手術摘出サンプルからニューロスフェアー法を用いて悪性神経膠腫幹細胞(GSC)を単離した。次に、リアルタイムPCR法を用いて血管の発生・分化関連遺伝子群の細胞内シグナル伝達経路の発現を解析した結果、いくつかの治療標的候補分子の発現上昇を確認した。 続いて平成24年度は血管新生研究を実施した。血管内皮前駆細胞(EPOC)および血管内皮細胞(HUVEC)を培養し、血管の発生・分化関連遺伝子群の発現を確認した。次に、GSCをEPOCもしくはHUVEC培地で培養したのちに血管内皮関連遺伝子群の発現を解析した結果、いくつかの治療標的候補分子の発現上昇を確認した。この中で、Chemokine (CXCL)/chemokine receptor (CXCR)の高発現に注目した。そこで、siRNA技術を用いてCXCL発現をノックダウンしたところ、MTSアッセイでGSCの増殖能の低下が確認できた。RT-PCR法で、VEGFなどの血管新生因子の発現が低下する傾向にあった。また、EPOCによる管腔形成能が低下する傾向があった。 以上の結果から、CXCL/CXCRはGSCの腫瘍原性および腫瘍血管新生に重要な役割を果たしており、その発現・機能を抑制することにより抗腫瘍効果がもたらされることから、悪性脳腫瘍幹細胞に対する治療標的候補分子の一つとして期待される。
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