2011 Fiscal Year Research-status Report
選択的オートファジー経路は、過剰リン酸化タウへの神経細胞の応答を決定づけるのか?
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23700431
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
小野 麻衣子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (70595876)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | タウ / p62 / 選択的オートファジー / 神経細胞死 / 神経原線維変化 / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
異常なタウ蓄積下で神経細胞が神経原線維変化を形成するか、神経細胞死を起こすかを左右する機構は明らかではない。 脳幹では神経原線維変化が豊富に形成され、神経脱落はほぼ見られないが、海馬では神経原線維変化はほとんど形成されず、大規模な神経脱落を生じるPS19系統のヒトタウ突然変異導入マウスを用いて、選択的オートファジーによるタンパク質分解機構と、そこにユビキチン化基質を誘導する因子であるp62が、異常なタウ蓄積下で神経細胞が発現するタウ病理の決定に関与するかを検討した。また、PS19マウスにおいてp62を遺伝的に欠損させ、p62がタウ病理に及ぼす直接的な作用を検証した。 PS19および野生型マウスの海馬では、脳幹と比較してオートファジー活性が高く保たれていた。成体のPS19マウスの海馬では、p62とユビキチン化されたオルガネラを含む凝集体が豊富に形成されており、この凝集体にリン酸化タウは含まれなかった。一方で、この凝集体は、PS19マウスの脳幹ではほとんど観察されなかった。このことから、海馬の神経細胞ではp62のユビキチン化基質の選択的オートファジーによる分解が正常な生理的条件下で活発であり、これらの基質の分解が、同じくp62の基質である異常なタウが増加することにより滞るため、恒常性維持機構が破綻し、神経細胞死が起こりやすい可能性が示された。 p62を欠損させたPS19マウスでは海馬、脳幹共にリン酸化タウの蓄積量が増加、神経炎症が亢進し、海馬では神経細胞死が促進された。これらより、p62はリン酸化タウの分解を促進し、その蓄積を防ぐことで、タウ病理に対する神経保護作用を発揮することが示された。 p62や選択的オートファジーはタウ病理のなかでも神経細胞死に密接に関与することが判明し、アルツハイマー病における認知障害の主因である神経脱落の治療ターゲットとしての可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、神経原線維変化形成を引き起こすタウタンパク存在下で、神経細胞が(1)神経原線維変化を形成する、(2)形成せずに細胞死を起こす、(3)明らかなタウ病理を生じない、と異なる応答を示す要因を、選択的オートファジーによるタンパク質分解機構と、それらにユビキチン化基質を誘導する因子であるp62を中心に明らかにするものである。本研究の具体的な目標は1、タウ病理の発現と、p62を含む選択的オートファジーに関連する因子との相関の解析2、ヒトタウ突然変異導入マウスにおいて、p62を欠損させた場合にタウ病理に生じる変化の検証3、p62の自己凝集能が、リン酸化タウの線維化に及ぼす影響の解析であり、平成23年度に項目1、平成24年度に項目2、項目3を実施する計画である。平成23年度終了時点で項目1、項目2で予定している解析事項の大半の実施が完了しており、成果も得られていることから、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した研究実施計画通り、平成24年度に実施予定の「本研究の具体的な目標」項目2および項目3の研究を行う。(本研究の具体的な目標)1、タウ病理の発現と、p62を含む選択的オートファジーに関連する因子との相関の解析2、ヒトタウ突然変異導入マウスにおいて、p62を欠損させた場合にタウ病理に生じる変化の検証3、p62の自己凝集能が、リン酸化タウの線維化に及ぼす影響の解析 項目2に関しては、計画を前倒しする形で平成23年度中にすでに研究に取り掛かっており、平成24年度は、平成23年度中に得られた成果の補完および、目標の達成に向けての研究を推進する。項目3に関しては、当該研究費が生じた段階での予定通り、平成24年度に研究を開始する。項目1に関しては、当該研究費が生じた段階では平成23年度に研究を完了させる予定となっており、おおむね目標は達成されているが、論文として成果を発表するためにさらに必要な成果の補強を、平成24年度も引き続き行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた段階での研究実施計画通り、平成24年度請求の研究費を用いて「本研究の具体的な目標」項目2および項目3の研究を行う。 また、平成23年度未使用分の研究費を用いて、平成23年度に完了予定の「本研究の具体的な目標」項目1の成果を補強する研究を実施する。
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