2011 Fiscal Year Research-status Report
HLA発現ヒト免疫構築マウスを用いたHIV感染モデルマウスの作製と免疫応答の解析
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23700513
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐藤 義則 熊本大学, エイズ学研究センター, COEリサーチ・アソシエイト (90455402)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヒト化マウス / HIV-1 |
Research Abstract |
本研究では、日本人において高頻度に認められる HLA-B*51:01遺伝子を組み込んだHLA-B51トランスジェニックマウス(B51Tg マウス)と高度免疫不全マウスであるNOD/SCID/Jak3ノックアウトマウス(NOK マウス)を交配させ作製した NOK/B51Tgマウスを用いて、ヒト造血系幹細胞を移植したヒト免疫構築NOK/B51Tgマウス(ヒト化NOK/B51Tgマウス)を作成し、このヒト化マウスを用いたHIV-1感染モデルマウスの作製とHIV-1感染に対するヒト免疫応答の解析を行った。 HIV-1感染ヒト化NOK/B51Tgマウスでは、感染2週間目のプラズマ中からHIV-1が検出され、少なくとも感染6週目まで検出された。ヒトCD4T細胞の割合は感染4週目から減少し、非感染ヒト化NOK/B51Tgマウスのそれと比べ有意な差が見られた。HIV-1感染に対するヒトCD8T細胞の免疫応答を調べるため、HIV-1感染後のヒト化マウス末梢血中のヒトCD8T細胞の表現型解析を行った。感染4週目と6週目の末梢血中では、細胞傷害活性能を持つlate effector memory CD8T細胞とeffector CD8T細胞の割合が増加していることが明らかなった。また、HIV-1感染ヒト化マウスにおいて細胞傷害活性能の指標となるCXCR1とCX3CR1を発現しているCD8T細胞の割合を調べた結果、非感染ヒト化マウスに比べその割合が有意に増加していた。さらに、HIV-1感染ヒト化マウスの脾細胞からHIV-1 Gag特異的CD8T細胞の誘導を示唆するデータが得られた。これらの結果から、我々のヒト化マウスではHIV-1特異的免疫応答を誘導することが可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HIV-1感染ヒト化NOK/B51Tgマウスでは、ヒトCD4T細胞の減少や細胞傷害活性を担うヒトeffector CD8T細胞の誘導が確認できた。これらの結果は、HIV-1感染患者の急性期感染症状を反映しており、我々のモデルはHIV-1感染モデルマウスとしての有用性が期待できる。さらにHIV-1特異的CD8T細胞の誘導が示唆されたことは、次の段階であるヒト化マウスにおけるエイズワクチンを用いたHIV-1特異的T細胞が誘導できると期待される。平成23年度の実験はほぼ計画通りの達成度であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
【HIV感染ヒト免疫構築マウスを用いた HIV-1慢性持続感染機序と逃避変異蓄積機序の解析】 HIV-1感染ヒト化NOK/B51Tgマウスにおいて、経時的に末梢血を採取しHIV-1のin vivo における血漿中のウイルス量の解析をRT-PCR 法を用いて定量する。さらに、HLA-B51拘束性 HIV-1特異的細胞傷害性T細胞のウイルスに及ぼす影響を解析するため、経時的に採取したウイルスの遺伝子配列の解析を行い、免疫逃避変異が誘導されるかを解析する。【ヒト免疫構築マウスにおけるエイズワクチンを用いたHIV-1特異的T細胞の誘導】 エイズワクチンを用いたHIV-1特異的T細胞の誘導を検討するため、HIVが産生する逆転写酵素等が含まれるPolタンパク質由来で我々が同定した強いHIV増殖抑制能および細胞傷害能が認められたHLA-B51拘束性のエピトープ2種類とHIVの構成タンパク質であるGag領域全体を組み込んだ modified vaccinia virus Ankara(MVA)ベクター(Roshorm Y., et al., Eur. J. Immunol., 2009)を、ヒト免疫構築NOK/B51Tgマウスに投与し、in vivoにおけるHLA-B51拘束性HIV特異的細胞傷害性T細胞の誘導について解析を行う。ヒト化NOK/B51Tgマウスにワクチンを投与し、経時的にマウスから末梢血、脾臓を採取する。得られた血液細胞はHLA-B*51分子と抗原ペプチドの複合体の四量体に蛍光色素が結合した試薬(テトラマー)を用いて、フローサイトメーターにより抗原特異的CD8T細胞について定量的な解析を行う。さらに脾細胞にペプチドによる刺激を加え、抗原特異的CD8T細胞における細胞増殖能およびIFN-γのサイトカイン産生能について、フローサイトメーターを用いて解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、ヒト化マウスの作成および解析用の消耗品と研究成果の報告にかかる費用に研究費を使用する予定である。消耗品についてはカタログを参考にし、国内における一般的な価格設定として算出を行っている。旅費については1年に1回の国内外の成果発表のための学会参加にかかる費用として算出している。
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