2012 Fiscal Year Research-status Report
酸性多糖で被覆したDNA複合体微粒子を内包した生分解性持続型遺伝子治療製剤の創製
Project/Area Number |
23700564
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
伊藤 智子 武蔵野大学, 薬学研究所, 客員研究員 (80372910)
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Keywords | 遺伝子治療 |
Research Abstract |
難病の治療法として注目を集める遺伝子治療だが、外来遺伝子は短期間で失活してしまうため有効な治療は難しい。そのため効果が持続する徐放タイプの遺伝子導入製剤が強く望まれる。しかし、DNA複合体は一般に分散安定性が悪いため有効な徐放手段がなく、長期安定発現の可能な製剤の成功例や、放出制御の報告がなかった。一方我々は、ヒアルロン酸で表面を被覆したDNA複合体が極めて高い分散安定性を示すことを見出した。本研究では注射投与可能な生分解性自己会合型基材に酸性多糖被覆DNA複合体を内包することで注射型核酸徐放製剤を創製することを試みた。 生分解性自己会合型基材としてアルギン酸ゲルを用いた。ヒアルロン酸被覆DNA複合体を添加したアルギン酸水溶液を、マウスの皮下に移殖した腫瘍内に注射投与すると生体内のカルシウムイオンによって投与部位でゲルが形成された。形成したゲルは腫瘍組織中の低pH環境下で徐々に分解された。また、pHコントロール剤として非晶質リン酸カルシウム(ACP)をアルギン酸ゲルに添加すると、緩衝効果によってゲル中のpH低下を抑制し、ゲルの溶解を制御することが認められた。また、ACPを添加したアルギン酸ゲルからは、ゲルの分解に応じてスムーズなDNAの放出が観察された。放出したDNA複合体は分散性を保ち、また、DNAの損傷もなく、腫瘍細胞での遺伝子発現が観察された。 免疫活性化遺伝子を用いて調製したDNA複合体内包ACP含有アルギン酸水溶液を、皮下腫瘍モデルマウスの腫瘍内に投与したところ、単回投与で劇的な治癒効果を示し、60%のマウスで腫瘍の完全消失が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に基づいて、高い発現効果を持つDNA複合体の徐放システムを構築し、小動物における良好な治癒の結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
小動物における治療効果の経過観察、およびその効果の解析。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
治癒の実験やその抗腫瘍効果の解析に必要な試薬等を購入する。得られた研究成果の発表のため、学会への参加旅費に使用する。
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