2011 Fiscal Year Research-status Report
女性アスリートのキャリアトランジションに関する研究-彼女たちは結婚しないのか?-
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23700702
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
上代 圭子 東京国際大学, 商学部, 講師 (00569345)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 女子サッカー選手 / キャリアトランジション / キャリアプロセス / 結婚 |
Research Abstract |
2年計画であるため、今年度は研究の枠組みの再確認および面接調査依頼を行った。1.関係者へのインタビュー調査:世界の女子サッカー界および女子サッカー選手の現状を把握することを目的として、インタビュー調査を行った。したがって調査対象者は、FIFA理事、アジアサッカー連盟の役員、南米サッカー連盟の役員および、アジアサッカー連盟の委員各1名とした。結果として、みるスポーツとしての状況が異なるので一概に比較はできないが、環境や待遇面は男子に比べて劣る点が多々あるため、今後は最近の盛上りを受けて善処していくとのことであった。また、海外は日本よりも、恋愛や結婚、出産などに対しての考え方が柔軟で寛容あり、日本も柔軟に対応していかないといずれ発展に行き詰ってしまうのではいかという意見があった。なお、関連資料も多数入手した。2.関連論文のレビュー:理論的な枠組みを明確化すべく、女性アスリートのキャリアトランジションに関する研究動向のレビューを行った。その結果、女性アスリートのみを対象とした研究は数点であり、国内外問わずキャリアトランジションに関する研究の対象者のほとんどは男子選手であることが明らかになった。また、スポーツと女性に関する研究は性役割に関するものから始まり、ジェンダーや階級、人種関係などを社会の中の文化的な表れのひとつとする関係論的分析に注目が集まるようになった今日においても、女性アスリートのキャリアプロセスの研究は皆無に等しいと言っても過言ではなく、女性アスリートのキャリアプロセスの中で結婚に焦点を当てた研究は見当たらない。3.調査依頼:トップアスリートの調査はサンプリングが難しいため、面接調査の準備として、日本サッカー協会およびアジアサッカー連盟にて役員を務めている元サッカー女子日本代表選手に、資料および情報を提供して頂くとともに、調査対象者となり得る元選手を紹介して頂いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年7月に行われたサッカー女子ワールドカップで優勝したことによって、女子サッカー界も女子サッカー選手も非常に注目される存在となり、社会やメディア、日本サッカー協会や国などからの女子サッカーの扱われ方や、これに伴う選手の地位、生活状況などが一変した。その結果、下記のような日本女子サッカー界の環境や被験者の状況の変化による研究の枠組みの再確認が必要となったため、当初の研究計画より進行が遅れた。1.日本女子サッカー界の変化:これまで日本の女子サッカーは、男子に比べ注目度も低いことから、日本サッカー協会やリーグ、スポンサーからのサポートや予算が少ない状況で選手生活を送っていた。しかしながら、世界一になり注目度が上がったことによって、以前よりサポート体制はしっかりとしたものとなり、金銭的にも予算やスポンサーが付いたことで以前より恵まれた状態になるなど、環境や状況が変化した。そこで、優勝以前の状況を前提として良いのかという懸念が生じたため、前提条件などについて再考した。2.被験者の状況の変化:世界一になったことにより日本女子サッカーの社会からの注目度は絶大なものとなり、新聞やテレビ、雑誌などのメディアへの露出や、大会などが増加した。その結果、現在解説者のような職業に就いている者においてはメディアでの起用が増えたり、指導者になっている者においては遠征や試合などが増えるなどしたため、既に引退している被験者たちも以前より多忙になり、調査協力が計画時よりも困難になった。 以上の2点から、本来平成23年度中に調査を行う予定であったが、充実した研究にするためには研究の枠組みを再確認する必要があると判断したため、調査開始を遅らせることにした。しかしながら、その他については順調に進行していることと、調査期間を短縮することで遅れを取り戻せる目処がついていることから、研究に大きな支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.被験者への調査依頼(平成24年4月~6月):元サッカー日本女子代表で、現在アジアフットボール連盟および日本サッカー協会で委員を務めている方に協力してもらい、被験者に簡単な説明を行った後、研究代表者よりメールまたは電話にて再度連絡し、本調査への協力を依頼する(30名を予定)。2.面接調査実施(第1次)(平成24年6月~7月):第1次面接調査対象者は、結婚した元女子サッカー選手とする。面接方法は、直接面接法を用いる。質問項目は、Drahota & Eitzen(1998)のインタビュー調査の項目である「Interview Guide」を援用する。質問は順をおってGuideの項目を1項目ずつ質問するのではなく、自分のスポーツ史を被験者自身に自由に語ってもらう形式で進め、その中でGuideの項目および本調査に必要な点を面接者が補足する形で進める(遡及法)。なお、面接を実施の際には、被面接者からの了解を得て面接内容を録音する。3.面接調査実施(第2次)(平成24年7月~8月):第2次面接調査対象者は、結婚をしていない元女子サッカー選手とする。調査方法は、第1次面接調査と同様である。4.データの整理・解析・分析(平成24年9月~12月):調査データは、研究協力者によって文字に起こした後、分析を行う。分析方法は、Mayring(1983)が構造化した質的内容分析を援用する。分析した内容は、Drahota とEitzen が構築したRole-Exit Modelの5つのステージを基にまとめ、修正モデルを構築するとともに、Role Exit Theoryについて検証する。5.報告書・論文執筆、投稿(平成25年1月~3月):分析結果を基に報告書および欧文論文を執筆し投稿するとともに、海外の学会等で発表を予定している。報告書は協力者ならびに関係機関に配布する(100 部を予定)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年7月のサッカー女子ワールドカップ優勝に伴う日本女子サッカー界の環境や被験者の状況の変化によって、本来平成23年度中に調査を行う予定であったが、充実した研究にするためには研究の枠組みを再確認する必要があると判断したため、調査開始を遅らせることにした。そのため、平成23年度に使用予定であった経費の項目のうち、「面接調査のための国内旅費(30,000円×30人)」および「調査協力費(5,000×30人)」を平成24年度の使用とした。したがって平成24年度の経費の使用予定は、今後の研究の推進方策を基に、下記の通りとする。1.面接調査のための国内旅費 2.調査協力費 3.テープ起こし謝礼 4.翻訳料 5.学会報告のための海外旅費 6.報告書印刷費および発送費
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