2011 Fiscal Year Research-status Report
長野オリンピックの遺産と地域に与えた影響に関する社会学的研究
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23700734
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Research Institution | Kanto Gakuen University |
Principal Investigator |
石坂 友司 関東学園大学, 経済学部, 准教授 (10375462)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | スポーツ社会学 / 長野オリンピック / 地域社会 / 開発 |
Research Abstract |
本研究は、1998年の開催から10年を経過した長野オリンピックの開催地域が、大会によって得られた遺産をどのように活用し、意義づけているのかを評価するとともに、各開催地域がどのような変容を経験しているのかについて、それぞれの取り組みから明らかにすることを目的としている。 長野オリンピックは広域開催で行われ、熱狂的雰囲気で開催を迎えながらも、その熱は冷め、現在では地域の再活性化に向けた取り組みがオリンピックの遺産を活用しながら始められている。4年計画の1年目にあたる2011年度は、これまで2008年から継続してきた調査のまとめを行うとともに、今後の調査に向けた課題の抽出を行った。まず、長野市における人口動態や商圏の状況、負債の状況、新幹線や高速道路の建設といった交通網の整備とその影響、競技場の後利用の問題について、行政のデータをもとに分析を行った。そこからは、長野オリンピックが必ずしも開催後を想定して計画されていなかったこと、特に交通網の発達が地域にプラスの影響を及ぼしていることが明らかとなった。 それぞれの開催地としては、軽井沢町・御代田町のカーリングをめぐる町作りの事例を継続的に調査するとともに、新たなカーリング場の建設や行政との一体的取り組みの進展について聞き取りを行った。特に御代田町ではNPOによるカーリング場の運営が地元企業の協賛を確固たるものにし、行政のバックアップを勝ち得た事例が浮かび上がった。 また、山ノ内町における渋・湯田中温泉と志賀高原の関係性とオリンピック開催後の地域の変容について、予備的調査を行った。和合会という組織を中心として、オリンピックをめぐっては協力関係にあった町だが、終了後は志賀高原のスキーに特化され、その協力関係は継続しておらず、温度差が見られることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長野オリンピックでは長野市、白馬村、山ノ内町、軽井沢町、野沢温泉村という5つの地域が開催主体となった。カーリングの開催で協力関係にあった御代田町を加えて、各地域の調査を継続していく予定である。これまで調査に入った白馬村、軽井沢町・御代田町の展開を追跡調査しながら、2011年度は新たに山ノ内町の調査に取りかかる予定であった。研究協力者との共同調査を展開しながら、予備的調査として観光協会関係者や町長への聞き取り調査を実施した。当初予定していた、オリンピック招致にあたって加熱した自然保護運動の展開と、その後の開発状況についてはアプローチできなかった。次年度に向けての課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の2年目にあたる2012年度は、軽井沢町・御代田町のカーリングをめぐる地域の取り組み、山ノ内町のオリンピックに向けた協力関係とその後の展開について継続的に現地調査を実施する。 長野市におけるオオリンピック後の変容を把握するため、特徴的に組織化が進んだとされるボランティア団体の聞き取り調査を実施するとともに、それら団体が中心となって関与する「長野オリンピック記念・長野マラソン」についても実態の調査を行う。また、一校一国運動の現在の展開については、継続して実施している学校関係者への聞き取りを通して、影響力の大きさを調査したい。 オリンピックというメガ・スポーツイベントの開催と終了後の地域変容をとらえ返すために、メガ・イベント研究の先行研究を整理する必要がある。その作業を通じて、オリンピックに期待されるレガシーの存在と、あまり問われることのない負の遺産について、どのような問いの立て方が可能になるのか、研究視角を構築していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度は長期間にわたる研究協力者との現地調査が実施できなかった。白馬村や山ノ内町の事例研究は本研究とともに、いくつかのプロジェクトと連動して調査継続を行う予定である。従って、2011年度には若干の調査費に余剰が生まれたが、2012年度は調査の深化を目指して2度の調査を実施する。 9月は長野市におけるボランティア団体の実態調査と一校一国運動のその後の展開について調査を行う。3月には軽井沢町・御代田町のカーリングを媒介にした町作りの展開について、さらには山ノ内町における自然保護運動と関連団体の調査を実施する(計20万円)。 また、研究協力者との定期的な研究会の実施と(月に2回実施、計10万円)、学会活動を通じた関係協力者との連携(10万円)を密に行っていきたい。あわせて、関連書籍の購入と調査・研究備品の購入を行う(15万円)。
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Research Products
(2 results)