2011 Fiscal Year Research-status Report
日英ラグビー国際試合のメディア言説に関する比較研究
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23700759
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森 仁志 関西大学, 人間健康学部, 准教授 (20458988)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | スポーツ人類学 / メディア / ラグビー / 日本 / 英国 / ヘゲモニー / ナショナリズム / 表象 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ラグビーを事例として、代表選手の身体を通じて「日本人らしさ」が語られ意味づけられるプロセスを提示・分析することにある。具体的には、日本と英国の国際試合をめぐる言説を両国のメディアから収集・比較することによって、ラグビー「母国」と「後進国」のヘゲモニックな関係性のなかで、記号としての「ジャパン」(日本代表)=国民の表象が、どのように生成・構築されてきたのかを明らかにする。 本年度は、日本および英国を調査地として、日本代表チームがラグビー「母国」イングランドに初挑戦した1971年の国際試合(花園と秩父宮ラグビー場の二試合)に特に焦点を当て、両国の新聞雑誌記事・映像メディア資料などを中心に収集をおこなった。 調査の結果、つぎの二点が明らかとなった。(1)当該国際試合を詳細に報じた英国三紙(タイムズ、ガーディアン、デイリーテレグラフ)の間で、各紙の随行記者ごとに日本代表チームに関する論調・評価に差異がみられた。(2)日本の新聞は、英国随行記者の論評を選択的に引用した。 以上から、ラグビー「母国」の帝国主義的なまなざしと非西洋の自己認識の関係性をより詳細に読み解く作業が可能となった。具体的には、日本各紙が、ラグビー発祥国のメディアとのヘゲモニックな関係のなかで、英国随行記者からの「称賛」に過敏に反応しつつ、「母国」の帝国主義的まなざしを極めて恣意的に流用しながら、「日本らしさ」を構築するプロセスが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本・英国での資料収集を当初の計画に従って実施した。 新聞・雑誌資料に関しては、想定していた以上の記事が存在し、収集に時間を要しているものの着実に作業を進めている。一方、一部の映像資料はテープ自体が保存されておらず、収集が不可能なことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本・英国での資料収集を当初の計画に従って実施する。 新聞・雑誌・映像メディア資料の保存状況がほぼ明らかとなったので、入手可能な資料に焦点を絞り着実に収集を行う。考察では、一部保存されていない映像資料の分析は断念せざるを得ないが、新聞・雑誌記事を中心に分析をすすめ、学会等での発表に備える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、日本と英国における集中的な資料収集が主たる活動となる。そのため、今年度と同様に、翌年度も研究経費全体に占める旅費(特に外国旅費)の割合が大きくなる。これ以外は、主として書籍・雑誌・映像資料の購入・複写費として使用する。
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