2011 Fiscal Year Research-status Report
徒手抵抗トレーニングの効果に関する研究:動作特性・生理特性と介入による影響の検証
Project/Area Number |
23700767
|
Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
荒川 裕志 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 研究員 (20591887)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | マニュアルレジスタンス / 伸張性 / エキセントリック / 筋損傷 |
Research Abstract |
平成23年度は、実験で使用する器具の製作、および研究1(徒手抵抗トレーニングにおける動作特性・一過性の生理応答の検証)の予備実験を行った。作成した実験器具は、徒手抵抗トレーニングで発揮された筋力を実測するための特性パッド(治具)である。パッドはアルミ製であり、小型圧縮型ロードセル(共和電業)が取り付けられている。徒手抵抗トレーニングを行う際に、このパッドを介してパートナーが抵抗を加えることにより、実施者がパッドに加えた圧力が測定される。圧力の時系列データにモーメントアーム長を乗じることで、発揮された関節トルクを推定できる。上記のパッドを用い、ゴニオメータ、表面筋電図(上腕二頭筋)を同期させて、肘屈曲運動を対象に予備実験を行った。条件は徒手抵抗トレーニング(MRT)と高負荷トレーニング(HRT)の2条件とし、同一被験者内で3セットずつ実験を行った。HRT条件は一般的なレジスタンストレーニング法に則り、70%~80%1RMの重量を用い、限界の回数まで行わせた。動作のスピードとテンポについては両条件で同一に規定した(1.5秒上げ、1.5秒下ろし)。その他の条件は交付申請書に記載した通りである。予備実験では、肘関節屈曲トルクと筋放電量の両方が、MRT条件においてHRT条件よりも大きい傾向が認められている。特に、肘を伸ばすエキセントリック筋収縮の局面でMRT条件とHRT条件の差が大きい傾向にあった。以上の傾向から、徒手抵抗トレーニングでは通常のレジスタンストレーニングよりも高い強度でエクササイズできる可能性や、筋発達を誘発する要因の一つである筋線維の微細な損傷を強く引き起こす可能性が示唆される。本実験では、トレーニング動作中の発揮筋力と表面筋電図に加え、実施前後の血中乳酸濃度、筋損傷マーカー(CK活性、ミオグロビン)、筋酸素化レベルなどについても評価する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書では、平成23年度中に研究1の本実験を終える予定であったが、年度終了時点で研究1の予備実験を終えた段階であり、当初の計画に達していないため、自己評価を「やや遅れている」とした。研究1の実験遂行が当初予定よりも遅れた主な理由は、小型圧縮型ロードセルによる圧力計測とゴニオメータ・表面筋電図との同期に不具合が生じたためである。共和電業社製のロードセルによる計測データと他のデータを同期して記録するには、同社製のインターフェースを複数台用いて同期させ、アナログデータを取り込む必要がある。インターフェース間を同期させる際に原因不明のエラーが生じ、共和電業に原因の調査を依頼していたことが、実験遂行遅延の主たる要因である。なお、以上の不具合はすでに解決しているため、平成24年度以降の研究を遂行するうえで問題とならない見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究1の本実験では、特性パッドによる圧力・ゴニオメータ・表面筋電図の各計測に加えて、トレーニング実施前後の血中乳酸濃度、筋損傷マーカー(CK活性、ミオグロビン)、筋酸素化レベル(近赤外線分光法)などについても評価を行う。実験における条件の設定と各動作パターンについては、予備実験で行ったプロトコルのままで行う予定である。以上の方針で、平成24年度の前半までに研究1を終える予定である。研究2(徒手抵抗トレーニングの介入が筋肥大・筋力増強効果に与える影響)については、平成24年度の後半に行う予定である。被験者に徒手抵抗トレーニングを介入させる際のプロトコルについては、交付申請書に記載した内容に基づく予定であるが、研究1の結果を踏まえて一部変更とする可能性もある。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
収支状況報告書の「次年度使用額」が発生した主たる理由は、平成23年度に実施予定であった研究1の遂行が遅れ、被験者謝金および血液分析費の使用を平成24年度に繰り越すためである。研究2は予定通り平成24年度中に実施予定であるため、二年間で請求する研究費の合計額については、当初の予定と同額になる見込みである。
|