2012 Fiscal Year Research-status Report
徒手抵抗トレーニングの効果に関する研究:動作特性・生理特性と介入による影響の検証
Project/Area Number |
23700767
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
荒川 裕志 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 契約研究員 (20591887)
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Keywords | マニュアルレジスタンス / MRT / 伸張性 / エキセントリック / 筋損傷 |
Research Abstract |
平成24年度は研究1(徒手抵抗トレーニングにおける動作特性・一過性の生理特性の検証)として、二つの実験を実施した。 一つ目の実験は徒手抵抗トレーニングにおける動作特性の検証である。8名の被験者に対し、肘屈曲動作の徒手抵抗トレーニング(MRT)とダンベル高負荷トレーニング(DRT)を左右どちらかの腕で行わせた。MRT条件ではパートナーの抵抗に対し全力で計10回、DRT条件では10RMに相当する重量に対し限界回数まで反復させた。MRT条件における筋力はロードセル(共和電業)を用いて計測した。ゴニオメータによって両条件の肘関節角度を計測し、以上の情報を元に肘関節トルクを算出した。同時に上腕二頭筋から表面筋電図も計測した。実験の結果、動作中の肘関節屈曲トルクはコンセントリック局面(MRT:35Nm、DRT:28Nm)とエキセントリック局面(MRT:50Nm、DRT:28Nm)の両方においてMRT条件の方が有意に大きかった(P < 0.05)。上腕二頭筋の筋放電については、両条件で優位な差が認められなかった。 二つ目の実験は徒手抵抗トレーニングにおける生理特性の検証である。12名の被験者に対し、肘屈曲動作のMRTとDRTを左右どちらかの腕で、実験1と同様の内容で3セットずつ行わせた。トレーニング前(安静時)、直後、15分後、30分後、2日後、4日後のタイミングで採血を行い、血中乳酸、血漿カテコールアミン3分画、血清コルチゾール、血漿CK、血中ミオグロビンの各検査を行った。また、トレーニング前、2日後、4日後のタイミングで等尺性肘屈曲筋力および遅発性筋肉痛の主観的強度を測定した。結果は未だ分析中であるが、血漿CK、血中ミオグロビン、等尺性肘屈曲筋力、遅発性筋肉痛の項目において、MRT条件の方がDRT条件よりもトレーニング前後の変化が有意に大きい結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の実施状況報告書では、平成24年度中に研究1と研究2の実験を行う計画であると記載したが、研究2については実施できなかったため、自己評価を「やや遅れている」とした。 研究2が実施できなかった主な理由は、研究1における実験を2つに分割して行ったためである。当初の計画では、徒手抵抗トレーニングの動作特性と生理特性の両方を1つの実験で検証する予定であったが、両特性の検証を同時に行うと測定項目数が多くなり、実験時間内に各測定を理想的なタイミングで実施できないことが判明した。したがって、研究1を動作特性と生理特性の各検証に分け、異なる被験者に対して別の実験として実施した。以上の理由により、実験遂行時のスケジュール管理と実験後の分析に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究1の成果発表および研究2の実験実施を行う予定である。 研究1の成果発表については、昨年度までに行った実験結果についての分析を進め、国際学会(European College of Sport Science:ECSS)および投稿論文の形で発表する予定である。年度内のスケジュールとしては、まず6月にECSSで発表を行う。そこでの議論を踏まえて論文の原稿を作成し、年度の後半に国際誌へ投稿する予定である。どの学術雑誌に投稿するかについては検討中である。 研究2(徒手抵抗トレーニングの介入が筋肥大・筋力増強効果に与える影響)の実験については今年度の夏以降に実施する予定である。実験のプロトコルは当初研究計画書に記載した内容のまま実施する予定であるが、ECSSで発表する際の研究1についての議論を踏まえて、一部を変更して実施する可能性もある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該の研究費が生じた理由は、研究2の実験を平成24年度中に実施できなかったためである。研究2の遂行が遅れた原因は「現在までの達成度」に記載した通り、研究1における実験を2つに分割して行ったことが理由である。すなわち、当初の計画では徒手抵抗トレーニングの動作特性と生理特性の両方を1つの実験で検証する予定であったが、両特性の検証を同時に行うと測定項目数が多くなり、実験時間内に各測定を理想的なタイミングで実施できないことが判明した。したがって、研究1を動作特性と生理特性の各検証に分け、異なる被験者に対して別の実験として実施した。 昨年度までに未使用の研究費は、本年度に実施する研究2の実験経費および研究1の成果発表に充てる予定である。研究2の実験では、経費を主に被験者への謝金として使用する。被験者は一般の大学生を予定しているため、経費の使用時期は授業との兼ね合いにより被験者を集めやすい秋ごろとなる見込みである。研究1の成果発表では、経費を国際学会に参加するための旅費・学会参加費、論文執筆のための書籍費・英文校正費として使用する見込みである。
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