2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700804
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
石井 聡 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90587809)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 疲労感 / 疲労 / ミラーシステム / 脳磁図 / 後帯状回 |
Research Abstract |
本研究は複数のパラダイムを用いて疲労感に関連する脳部位を同定することで、疲労のミラーシステムの存在を示し、疲労感の神経メカニズムを明らかにすることを目指している。本年度は身体疲労における疲労感の神経基盤について検討を行った。インストラクション(暗示)によって被験者に疲労感を生じさせることができる可能性に着目し、疲労負荷課題を行った場合に障害となる慣れや意欲そして脳活動測定時の体動・ノイズの問題を完全にのぞいた実験を考案した。実験は2試験区クロスオーバー試験のデザインで行い、被験者には2回に渡って実験に参加して頂いた。片方の試験日には、"見ると握力が低下すると証明されている動画"であることを被験者に説明した後に約3分間のビデオクリップを見てもらい、その前後での疲労感の変化、握力の変化を測定した。また疲労感に関連する脳活動を評価する目的で時間分解能に優れた脳磁図による脳活動の測定を行った。インストラクション前後で安静閉眼状態での自発脳活動を測定し、インストラクション後にハンドグリップを実際に握っているかの様にイメージしてもらう課題を行い、課題中の脳活動を測定した。もう片方の試験日には"見ても握力が低下しないことが証明されている動画"を用いて同様の検討を行った。これらの結果、インストラクションにより疲労感が統計学的に有意に上昇したことが確認され、その際に後帯状回に脳活動が認められた。この結果は、後帯状回が疲労感の神経メカニズムに深く関わっていることを示しており、我々これまでの成果と合わせて、疲労感のミラーシステムの存在を示唆する重要な結果である。さらに疲労感の評価に関わる脳部位を明らかにする研究も開始しており、現在実験実施中・解析中である。これらの研究により疲労感の神経メカニズムが明らかになることで、疾患関連疲労を中心とした疲労への対処法の開発に大きく貢献できるものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は身体疲労をテーマに、実際に疲労感を感じているときに働く脳部位を明らかにすることであった。今年度実施した研究は、今までに疲労感の神経基盤を明らかにする目的で行われた研究とは全く異なるパラダイムを用いたが、我々の今までの検討や既報と一致する結果を得ており、身体疲労における疲労感関連脳部位に関する重要な知見が得られたものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
H23年度に開始した身体疲労における疲労評価に関連する脳部位についての研究を押し進め、完了させる。同時に、H24年度の研究計画に従って、精神疲労における疲労感関連脳部位を明らかにする目的で、脳磁図を用いた新たな研究を開始する。なかでも、H23年度の成果に基づいて、自分自身が疲労を感じる場合の神経メカニズムに重点をおいて、等価電流双極子法に加え、空間フィルター法やコヒーレンス解析などの最新の解析法を駆使して研究を進める予定である。これらの結果を統合し多方面から検討することで、疲労感の神経メカニズムの概要を明らかにするとともに、疲労した他人を見ることでこれらの脳部位が活動すること(疲労のミラーシステム)の意義を明らかにしていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度繰り越し分を、今年度中に終了できなかった現在進行中の脳磁図実験に当てる。H24年度から新たに開始する研究に関してはもともとの研究費使用計画に従って支出する予定であり、研究費使用計画に大きな変更は生じない。具体的には、被験者に対する謝金や解剖学的情報取得のためのMRI撮像の費用を中心に、解析用ソフトウェアの更新、データ記録媒体、試験関連書類の印刷費、通信費、論文投稿費、研究成果発表のための学会出張費などが必要である。
|
Research Products
(2 results)