2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700900
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
李 恩瑛 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (60583424)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | インスリン / 高脂肪食 / 糖尿病 |
Research Abstract |
平成23年度は、高脂肪食負荷mIRマウスで糖尿病が発症する機序についてまず、膵β細胞の脂肪毒性の影響を検討した。その結果、意外なことに高脂肪食負荷mIRマウスでは膵β細胞量が著増しており、血中インスリン濃度も野生型の40倍以上と極めて高値であった。従って、膵β細胞が障害されて糖尿病が発症しているのではないことが明らかになった。そこで、高脂肪食負荷mIRマウスのインスリン作用を検討する目的で、各臓器の糖・エネルギー代謝を評価した。すると、高脂肪食負荷マウスでは、mIRマウスと野生型マウスの両者で、肝臓でのグリコーゲン利用が減弱しており、むしろ中性脂肪を利用していることが明らかになった。一方、糖新生酵素であるPEPCKの肝臓での発現は、mIRマウスで異常が認められたが、高脂肪食負荷の処理でも同様の変化が認められ、PEPCKの発現変化だけでは糖尿病発症を説明することはできないと考えられた。そこで、エネルギー代謝状態を評価する目的で酸素消費量とその際の呼吸商を測定したところ、mIRマウスのみで暗期の脂肪利用が亢進していることが明らかになった。これらの結果に基づき、脂肪組織での脂肪酸合成や中性脂肪分解を評価したところ、mIRマウスでは摂食状態での脂肪分解がほとんど抑制されないことが明らかになった。既に視床下部のインスリンシグナルが白色脂肪組織での中性脂肪分解を制御することも報告されていることから、視床下部のインスリンシグナル異常が高脂肪食負荷mIRマウスの糖尿病発症の原因となっていることが示唆された。来年度は引き続き、代謝が変化しているステップを詳細に解析するとともに、視床下部のインスリンシグナルが糖代謝に与える寄与度を検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、β細胞と視床下部の脂肪毒性を評価し糖尿病発症を解析する予定であったが、β細胞の細胞傷害は予想外に軽度であり、糖尿病の主たる原因とは考えにくかった。ところが興味深いことに、高脂肪食負荷mIRマウスでは肝臓や脂肪組織の代謝調節の大きな障害が同定され、糖尿病の原因となっていることが判明した。既に脂肪組織の特定分子のシグナル異常が同定できており、糖尿病病態の分子レベルでの解析を進める根幹が捕らえられたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度はまず、各臓器における糖・エネルギー代謝関連分子の発現と活性が、高脂肪食負荷mIRマウスでどのように変化しているかを詳細に検討する。さらに、mIRマウスではインスリンシグナルのどの経路が障害されているかを各経路について検討する。さらに、視床下部の関与を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は上記の研究を推進するため、試薬等の消耗品購入にあてる予定である。
|
Research Products
(5 results)