2012 Fiscal Year Research-status Report
認知症と糖尿病の関係を探る―脳内神経伝達物質を指標として―
Project/Area Number |
23700942
|
Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
西森 敦子(西山敦子) 中村学園大学, 栄養科学部, 助手 (90461475)
|
Keywords | 糖尿病 / 健忘症 / マウス / 行動量 / 摂食量 / 摂水量 |
Research Abstract |
健常マウス(C57BL/6J、以下BLマウス)および糖尿病マウス(KK/Ta、以下KKマウス)に、スコポラミン(Sco)を1.5mg/kg、7.5mg/kg、15mg/kgとなるように腹腔内投与し、摂食量・摂水量・行動量を測定した。コントロールには生理食塩水を用いた。 行動量において、BLマウスではScoを投与してもほぼ変化はなかったが、KKにおいてはSco1.5mg/㎏を投与すると行動量が増加した。BLマウスとKKマウスを比較してみるとSco1.5mg/kg投与の場合で両群間に有意な差がみられた。Sco7.5mg/kg、Sco15mg/kg投与の場合の行動量は、両群間に有意な差はみられなかったが、BLマウスよりもKKマウスの方が行動量は増加している傾向であった。 次に、BLマウスの摂食・摂水量は生理食塩水投与の場合と比較して、若干ではあるが、減少傾向を示した。しかしながら、大きな変化ではなかった。一方、KKマウスの摂食量に変化はなく、摂水量は生理食塩水投与と比較してSco1.5mg/kg投与でやや増加した。さらに、BLマウスとKKマウスを比較してみると、摂水量においてSco1.5mg/kg投与で両群間に差がみられた。 また、両群の体重の変化については、BLマウスにおいてScoの濃度が高くなるにつれ、体重は減少し、逆にKKマウスでは増加した。その体重変化は、各濃度において両群間に有意な差がみられた。さらに、最も高濃度であるSco15mg/kg投与した場合、BLマウスは生理食塩水と比較して有意な減少を示し、KKマウスでは有意な増加であった。 KKマウスにおけるSco投与による行動量の増加は、健忘症の症状が現れたためだと示唆された。つまりScoの影響でマウスが新たな生活環境だと思い込み、探索行動を示した可能性が考えられる。糖尿病に罹患した場合、健忘症の症状が現れやすいことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、糖尿病のモデルマウスであるKK/Taマウスを用い、一時的に健忘症を引き起こすことが知られているスコポラミンを投与し、糖尿病と認知症を発症した場合のモデルマウスを作成した。そのモデルマウスを用いて摂食量・摂水量・行動量の測定を行い、健常マウス(C57BL/6J)との違いについて検討することができた。 また、ラットを用いて、健常ラット、糖尿病モデルラット、認知症モデルラット、および認知症と糖尿病を発症したモデルラット、この4種類のラットを使用して、マイクロダイアリシス(微小透析)法を用いた脳海馬セロトニン(5-HT)濃度および、一酸化窒素(NOx)濃度の違いについて、データの分析を進めている段階である。 糖尿病と認知症を合併したモデルラットの作成、その後、脳定位手術などマイクロダイアリシス実験に供するまでの時間、および、データ比較のために上記4種類のモデル動物で実験を進めていること等、一つの結果を出すまでに非常に時間がかかる。しかしながら、全体の進捗状況を鑑みると、おおよそ順調に進展していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、マイクロダイアリシス法により脳海馬セロトニン(5-HT)濃度および一酸化窒素(NOx)濃度を、健常ラット、糖尿病モデルラット、認知症モデルラット、認知症と糖尿病を発症したモデルラットでそれらの違いを比較検討する。 なお、糖尿病モデルラットはストレプトゾトシン(STZ;60mg/kg)を腹腔内に投与し、血糖値を確認後、高血糖を示したラットを用い、認知症の発症にはスコポラミン(1.5mg/kg)を投与し作成する。 さらに上記のラットに5-HTのアゴニスト・アンタゴニストを用いて、脳海馬5-HT濃度、NOx濃度の違いを比較する。 また、マウスを用いた場合においても、上記の4種類のモデルマウスを作成し、Y字迷路試験等の短期記憶に関する影響についても検討を行う予定である。 脳神経学的視点から糖尿病と認知症の関連性について、マイクロダイアリシス実験の結果が十分吟味できるよう、例数を増やし、データの整理を進めていく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画については、International Congress of Nutrition(The 20th ICN)[開催地:グラナダ(スペイン)、会期:2013年9月15~20日)]の学会出席を予定しており最新の研究について情報に触れ、今後の研究の一助にしたい。また、本年度(平成25年度)の研究遂行のため平成24年度の研究費を一部繰り越した。 研究遂行にかかる消耗品は、脳定位手術に関する消耗品としてガイドカニューレ、キャップナット、ダミーカニューレ等を、マイクロダイアリシス実験における消耗品として分析カラム、透析プローブ、マイクロシリンジ、また、その他の消耗品として、実験動物、試薬、ゴム手袋を購入予定である。しかしながら、マイクロダイアリシス実験における消耗品は一つ一つが高価なため、消耗品の中でもマイクロダイアリシス実験にかかる割合が非常に高くなることが予想される。 よって、本年度の研究費は、主に、国際学会出席のための旅費、および研究遂行に必要な消耗品類の購入のために使用予定である。
|
Research Products
(14 results)