2011 Fiscal Year Research-status Report
有機化学の多面性を実感できる実用的化学実験教材の開発
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23700956
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
網本 貴一 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60294873)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 化学教育 / 実験教材 / 教材開発 / 有機化学 / 材料科学 / 生体関連化学 |
Research Abstract |
中等教育課程の有機化学分野に関して、既習の学習内容と関連づけて身の回りの現象や材料・生体物質を捉えることができるとともに生徒自らの興味・関心と探究活動への意欲を喚起できる化学実験教材を開発することを研究の目的とし、以下の通り[A] 有機化学・[B] 材料科学・[C] 生体関連化学の3分野で研究を推進した。これらの内容は国内学会(日本化学会年会・西日本大会、有機化学関連の学会)で成果公表され、さらにその一部を論文誌に公表あるいは投稿中である。[A] 有機化学 (1) 光学異性体の導入素材であるヒドロキシ酸とアミノ酸を組み合わせて簡便に光学分割を行える実験教材を開発した。(2) Friedel-Crafts反応とアルコールの反応性を学ぶ実験教材開発の一環として、1,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)-2,5-ジメトキシベンゼンの結晶構造を明らかにした。(3) カルボニル化合物の定性分析に用いられる2,4-ジニトロフェニルヒドラジンに色調の異なる多形結晶の存在を見いだし、多形結晶の形成条件ならびに結晶構造と吸収特性の関係を明らかにした。[B] 材料科学 (1) 高分子の分子量を中和滴定による末端基定量と粘度測定で簡便に求める教材的手法を確立し、実験室的合成から分子量決定までの学習活動の具体例を提案した。(2) 機能性有機材料としての有機色素に着目し、その構造と物性を評価するとともに、先端化学の一端を垣間見る実験素材としての可能性を検討した。[C] 生体関連化学 (1) 生体内化学反応の好例としてアルコール発酵を取り上げ、代謝の多段階性とアルコール発酵の量的関係を探究できる実験教材を開発した。(2) 医薬品に関する実験素材として解熱鎮痛薬イブプロフェンに着目し、中和滴定による含量決定や酸塩基抽出による成分分離の教材的実験方法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の「研究実施計画」で示した3分野において、バランスよくかつ多岐にわたる教材開発を進めることができている。また、その成果の一部を化学教育の関連学会で公表するに至っている。この意味で、本研究課題はおおむね順調に進展できていると評価している。なお、研究開始後1年での実施状況報告であることから本報告書を提出する時点で掲載済となっている論文は少ないものの、投稿中論文・執筆準備中のものが蓄積されてきており、今後の成果公表を楽しみにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も[A] 有機化学・[B] 材料科学・[C] 生体関連化学の3分野での教材開発研究を継続的に進める。これまでに明らかにされた研究成果を論文として公表できるよう努めることは勿論、新しい視点からの教材開発を積極的に推進する。現時点では各項目に対して以下のようなものを想定し、既に基礎的検討を進めている。[A] 有機化学 (1) 定性分析や官能基変換を援用した有機化合物の構造決定、(2) グリーンケミストリーの重要性を意識させる有機化学反応の導入と学習モデルの提案。[B] 材料科学 (1) 金属錯体に関する実験教材と学習モデルの提案、(2) 高分子材料の機能性を探究できる先端的化学実験教材。[C] 生体関連化学 (1) 生体内酸化還元反応を可視化する実験教材、(2) 酵素の基質特異性や反応速度論に関する実験教材。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、教材開発に当たって必要となる試薬類・ガラス器具ならびに計測機器消耗品の他、前年度には購入できなかったデジタル旋光計等ICT機器とマルチ計測センサ・データロガーを購入予定である。国内旅費として、日本科学教育学会第36回年会、日本化学会西日本大会2012、および日本化学会第93春季年会での成果発表のための旅費を支出予定である。あわせて、教材開発にかかる実験補助に対する謝金、成果発表にかかる学会参加登録料・論文投稿料を支出する予定である。なお前年度から繰り越して使用予定の研究費が若干あるが、これは投稿論文の掲載決定が今年度にずれこんだためである。今年度になって受理されたので、その論文投稿料として支出するように予定している。
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Research Products
(10 results)