2011 Fiscal Year Research-status Report
多次元データ・指標を直感的に表現する顔グラフ表示法の開発と大学評価支援への活用
Project/Area Number |
23701003
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Research Institution | National Institution for Academic Degrees and University Evaluation |
Principal Investigator |
渋井 進 独立行政法人大学評価・学位授与機構, 研究開発部, 准教授 (60415924)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 大学評価 / 指標 / 顔グラフ |
Research Abstract |
近年、大学評価に関する多次元データ・指標の利用を促進する手法の開発が、大学データベースの公開が進みつつある世界的趨勢のなかで求められている。本研究ではその一環として、多変量データを同時に顔で表現することが可能な"顔グラフ"に着目した研究を行った。多変量を同時に表示可能であるという既存の表示法のメリットに加え、データの持つ印象を適切に反映し、直感的に多変量データを把握できるインターフェースとしての意味も加えた顔グラフ表示法を定義することを目的とした。それらをもとに、定義された表示法を大学情報の表示へと用いるための支援ツールとしての導入可能性を検討することを目的とした。初年度は、まず、顔グラフ表示へ適した大学評価に関する多変量データについての調査およびデータの精査を行った。特に、近年高等教育において注目されている学習成果の指標を題材として検討を行った。指標に関しては過去の評価報告書のデータをテキストマイニングすることにより抽出した。同時に顔グラフの定義へむけた形態学的な基礎に関する研究を推進した。また、新たな表示法開発に向けて顔の知覚の特性に関する研究をレビューするとともに、既存の顔グラフ表示法についても再検討し、それらの限界点を探る事により新たな顔グラフ表示法の定義に着手した。これらの研究成果は、大学評価に関連する実務者を含んだ国際会議において発表をし、その実務への応用可能性を含めた有効性について広く理解が得られた。また、顔や心理に関連する国内外の学会で発表を行うことにより、学術的な成果として学界への貢献を行った。また、評価に関連する学会誌および顔に関連する学会誌に投稿し、査読を経て掲載された。これらから、本研究の社会的、学術的な意義が示されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、大学評価に関する多次元データ・指標の利用を促進する手法の開発を目的とした。そのため、多変量データを同時に顔で表現することが可能な"顔グラフ"に着目した。多変量を同時に表示可能であるという既存の表示法のメリットに加え、データの持つ印象を適切に反映し、直感的に多変量データを把握できるインターフェースとしての意味も加えた顔グラフ表示法を定義し、定義された表示法を大学情報の表示へと用い、支援ツールとしての可能性と表示法の有効性を確認するものであった。手順として、まず顔から受ける印象の判別に影響を与える心理的要因、および物理的特徴との関係について明らかにする。次に、顔グラフ表示法を開発し、さらに実際の大学情報に関する多変量データに適用した結果の評価を行うものであった。2年における計画の初年度である本年度は、大学評価に関する多次元データ・指標の利用を促進する手法の開発という本研究の目的の基礎となる、多次元データの精査に特に重点を置いた研究を行った。過去の自己評価書や評価結果報告書と行った評価データの分析を、実務者が関与する国際会議等での発表をする事により現場の意見反映させた表示法開発の基礎データとなったことは、本研究の目的を達成する上での重要な進展であると言える。また、顔の形態学的な基礎および、顔認知に関する心理学的研究についてレビューした研究論文を執筆したことにより、学術的な成果を学界へと還元する事ができた。また、既存の統計ソフトウェアパッケージにおける顔グラフ表示法の調査とその限界について検討を行ったことから、本計画の目的である新たな顔グラフ表示法の作成とその導入までを考えると、計画は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた大学評価に関する多変量データ、指標についての調査研究結果について、広く公表をはかるとともに、引き続き国内外の大学DB等における指標の収集状況について調査を進める事により、評価に関連する適切な多変量情報についての精査を続ける。さらに、顔グラフ構築に関する基礎的な情報として、引き続き形態学的な基礎や心理学的な基礎についてのレビューを進め、様々な顔グラフ表示法の試行的構築や、それにもとづく顔グラフ定義の更新を行う。さらに、研究計画の2年度目かつ最終年度である次年度は、初年度の文献レビューによって得られている知見をもとに、グラフ表示法への応用と、その検証に主眼を置いた研究を行う。これまでに調べた顔画像の印象のうち影響の大きかったものを、顔グラフとして表示可能な要素として定義する。個々の顔の要素は、先行研究で用いられてきた線画図形を参考としつつ構成して表示ルールを決定する。定義された顔グラフは、評定実験及び大学関係者及び評価経験者等の実務者へのインタビューを通して、実際に評価の現場での支援システムとしての導入可能性について検討を行う。これらの研究成果は国内外の学会で発表するとともに、論文として投稿する事により、広く社会に周知を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度から引き続いて、多変量データ・指標の精査のための情報収集に関する旅費および、顔グラフ作成に関連する消耗品図書が必要になる。特に、指標については学習成果の測定に関する社会的な関心の高まりを受け、それを中心に調査した指標を重視して収集する。また、独自の顔グラフ作成に本格的にとりかかるため、プログラミングツールソフトウェアおよびそれを稼働するためのパーソナルコンピューターが必要となる。次年度は、評価情報を表す大学学部ごとを1つの顔グラフとし、多変量データ(学習成果の指標、大学の施設設備に関する指標、等)を、それぞれの特徴へと割り当てることにより、グラフ表示の定義を行う。それらの作成された顔グラフを用いて、評価の実務者等へ実際にいくつかの指標を顔グラフで呈示する事により、認証評価等の評価作業を想定し、実際の作業に有効であるかの評価実験を行う。そのための、大学関係者、評価者等の実験参加者20名程度への単純労働謝金および、実験参加者の確保のために研究遂行者が出張するための旅費が必要となる。実験のためのパーソナルコンピューター及び実験プログラムを作成するためのソフトウェアが物品費として必要となる。また、最終年度として、これらの研究によって得られた成果を国内外の学会にて発表する旅費が必要となる。さらに、その他としての学会誌投稿料や、謝金としての校閲費用が、本研究における研究成果を広く公表するための費用として必要となる。
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Research Products
(9 results)