2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国における農村医療・衛生事業に関する歴史研究
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23701011
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
福士 由紀 総合地球環境学研究所, 研究推進戦略センター, 拠点研究員 (60581288)
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Keywords | 農村医療 / 中国 / 日本住血吸虫症 / プライマリ・ヘルスケア / はだしの医者 |
Research Abstract |
本研究は、1950年代から70年代の中国における日本住血吸虫症対策に関する歴史資料の分析およびインタビュー調査などを通して、建国期から改革開放以前の中国における農村医療・衛生事業の歴史的展開と、その地域社会における実態を把握することを目的とする。 平成25年度は、平成23・24年度の研究成果を踏まえ、戦前~戦後における日本の住血吸虫症対策との比較の上で、中国における日本住血吸虫症対策、農村における医療サービスの普及のあり方の特徴を中心的に検討した。 日本では住血吸虫症対策は、戦前からの細菌学の発展という基礎の下、専門家を軸に進められ、また戦後は経済発展を背景に、中間宿主の生息地の大規模なコンクリート固化という環境改変を中心に進められた。これに対し、戦後中国では、日本に比べ医療専門家の質量および経済力が不足していた。そのため、地域社会の資源を利用して、対策人員(血防員など)の養成・配置から、中間宿主の撲滅対策、環境改変といった一連の対策を進めざるを得なかった。また、それは度々の政治的・経済的変動に大きく影響され、継続性に乏しく、改革開放以前において日本住血吸虫症自体は撲滅にはいたらなかった。しかし、こうした地域社会全体の動員は、住民に対する一定程度の教育的効果を持ちえたとも考えられる。 中国での農村医療の特徴である大衆動員が最も盛んに行われた1970年代、中国と西側諸国との関係改善もあり、中国のユニークな農村医療が国際的に宣伝され、プライマリ・ヘルスケアのモデルの一つとして賞賛されるにいたる。本研究では、従来英雄的に語られてきた中国農村医療の展開を、寄生虫病対策という具体的事例に即して、その限界や制約要因も踏まえつつ考察し、中国医療史に新たな知見を加えることができた。
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Research Products
(7 results)