2011 Fiscal Year Research-status Report
博物館標本の種子を用いた絶滅植物集団の復元と標本管理方法の開発
Project/Area Number |
23701024
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
志賀 隆 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (60435881)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 生物保全 / 植物標本 |
Research Abstract |
●標本調査および対象種の絞込み:土地開発などにより、都市部において個体群の減少が著しく、土壌シードバンクからの復元が困難と考えられる、水生植物・湿生植物40種に絞って調査を進めた。大阪市立自然史博物館の標本庫(OSA)に収蔵されている標本群を調査し、利用に適した標本をリストアップし、標本から種子を収集した。●発芽実験:初年度となった2011年度は最近採集されたもので、最も状態の良い標本に絞って種子を収集し、発芽実験を行った。発芽試験における酸素条件はこれまでの研究論文を参考にして選択し、温度条件は段階温度法(Washitani,1987)に従って設定し実験を行った。また、発芽しなかった種子は胚を取出し、テトラゾリウム染色を行い、赤色化の染色の有無によって胚の酵素活性を確認した。●栽培実験:発芽させることができたものについては、室内の人工気象器および自然史博物館の実験圃場において実験的に栽培を進めた。●結果のまとめ:発芽試験の結果、40種のうち12種(30%)で発芽を確認した。実験に用いた107標本のうち16標本で確認され、もっとも古いものでは10年前のカワツルモの標本から発芽が確認された。また発芽がみられなくてもテトラゾリウム染色による呈色反応は11種15標本において確認された。呈色反応が確認された標本のうち、もっとも古いものは50年前のカワツルモの標本であった。上記の実験結果から標本種子は絶滅集団の復元に用いることができることが明らかになった。この発芽実験のスクリーニング結果を日本植物分類学会(平成24年3月)において発表した。 志賀 隆,2012.博物館標本の種子は生きている?:標本種子を用いた絶滅集団復元の試み.日本植物分類学会第11回大会,大阪.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標本種子のスクリーニング作業は50種を予定していたが、40種行うことができ、そのうち12種から発芽を確認することができた。またテトラゾリウム試験による呈色反応が確認されたものを含めると20種の標本が生存していることを確認でき、博物館標本の種子は絶滅集団の復元に用いることができることを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
3ヶ年の研究のうち2年目にあたる本年度では、標本種子のスクリーニングの追加調査、標本のコンディション、適切な管理方法の調査、復元した集団の遺伝的多様性の評価をするための予備調査を進める。●標本種子の追加発芽試験および栽培(平成24年5月~):土壌シードバンクからの復元が困難と考えられる、水生植物・湿生植物・草原性の植物(およそ30種)に絞って発芽試験の追加調査を行う。標本種子は大阪市立自然史博物館の標本庫(OSA)に収蔵されている標本を用いる。新潟大学教育学部実験圃場、大阪市立自然史博物館の実験圃場および、普及行事で使用しているビオトープにおいて、発芽に成功させた植物を栽培する。●標本のコンディションによる発芽率の違い(平成24年6月~10月):様々な年代、保存状態の標本が収蔵されている種を5-10種程度選定する。これら標本から種子を回収して発芽実験を実施する。また、同じ種について様々な方法で実際に標本を作製・管理してた後、種子の生存率を調べることにより、どのような状態の標本の種子を保全に利用することができるのかを明らかにする。●野生集団と復元集団の遺伝的組成の比較(平成24年9月~):発芽させることが可能だった2-3種について、標本種子から復元した集団と野生集団の遺伝的組成や多様性を比較するため、本年度は予備調査を行う。必要であればマイクロサテライトマーカーの開発を行う。●結果のまとめ:大阪市立自然史博物館において講演を行い、市民に広く研究成果を公表する(平成24年5月)。日本生態学会(平成25年3月)および日本植物分類学会(平成25年3月)において発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
●消耗品費:標本種子から復元した個体群の遺伝的多様性を評価するため、実験に必要な試薬・物品を購入する。また発芽試験、栽培に必要な器具を購入する。●旅費:野外調査および標本調査(新潟‐大阪×3)のための交通費、成果発表のための交通費(講演会、学会発表×2)を計上した。●謝金:標本調査および栽培実験のためにアルバイト代金(25人日)を計上した。●その他:サンプル輸送費および論文校閲費に使用する。
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Research Products
(1 results)